第59回東海教育社会学研究会 報告

報告者:児島明氏(名古屋大学大学院研究生)

テーマ:「ニューカマーの子どもと日本の学校文化-日系ブラジル人の教育戦略の観点から-」

日時:2002年12月7日(土) 15:00~17:30

場所:南山大学(名古屋キャンパス) 

 児島氏の報告は、日本の学校における日系ブラジル人の生徒と、彼らに関わる様々な人々との経験のあり様に注目することで、わが国の学校文化の特徴を浮き彫りにし、その変革の方途を探ることを目的とするものであった。その際、氏は、従来の本質性や自明性を帯びた実態としての「学校文化」のとらえ方には限界があると指摘し、当事者自身による現実的解釈や意味付けの過程に注目することにより、ニューカマーが日本で生活する上で形成する論理と日本の学校が前提とする論理の間の葛藤や齟齬の諸相をできるだけ丹念に描き出そうとする。そこで氏は、日本の学校教育をめぐっての、日系ブラジル人生徒、その親、教師のもつそれぞれの立場からの「戦略」に注目し、名古屋市のある地区の中学校や日系ブラジル生徒の家庭をフィールドとし、そこにおける文化の構築を人々の具体的な行為の集積として抽出することを試みた。

 報告では、①日系ブラジル人家族の「家族の物語」(彼らが日本で生活することに対する主観的意味づけ)と彼らの子どもの「教育戦略」との関係、②日系ブラジル人生徒に対する教師たちの戦略、③日系ブラジル人生徒たちの抵抗とジレンマの諸相、④マージナルな立場にある日本語教師の「文化的境界枠」をめぐる戦略と学校文化変革の可能性、などの諸点についてふれられた。それらを踏まえて、児島氏が結論として強調したのは、(1)学校文化は一枚岩ではないばかりか、ニューカマーの存在が、学校がもつ「文化的境界枠」の意味を絶えず変容させる可能性をもつこと(「生成する学校文化」)、(2)学校側に差異を管理されている生徒たちがそれを拒否し、自分たちでそれを操作する側面もあること(「差異の管理をめぐる闘争」)などであった。

 以上の報告に対して、ニューカマー生徒の現状や彼らのアイデンティティの問題、さらに児島氏の研究とウィリス等のカルチュラルスタディーズとの関連、取り上げたフィールドの特殊性・一般性をめぐる問題まで、多方面にわたる活発な質疑応答がなされた。さらに、様々な集団のそれぞれ異なる戦略が、互いにどう相互作用し影響しあっているのかの検討が、今後の研究課題となるとも指摘された。

(東海教育社会学研究会事務局:山﨑香織) 
 

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