第61回大会の「課題研究」「テーマ部会」について<重要>

第61回大会の「課題研究」「テーマ部会」についてお知らせします。同様のものは、ブリテン148号にも掲載しています。 
 

(研究委員会 委員長 志水宏吉)



● 課題研究のお知らせ 

 今年度の学会大会では、別掲のテーマ部会の新設に伴い、従来より1つ少ない、2つの課題研究部会を設定しました。大会校シンポと並行して3時間枠のセッ ションとなります。皆様、ふるってご参加ください。


課題研究1「教育とグローバリゼーション(2):移民・言語・政策」

【趣 旨】
 グローバリゼーションは人・モノ・金・情報の国境を越えた移動が増大かつ加速化する現象として一般的に理解されている。そして、なかでも加 速化が遅いのが人の移動であると言われる。とはいえ、国境を越えた人の移動という意味でのグローバリゼーションは、日本の公教育の現場や地域社会において も確実に根をおろしてきているのは間違いない。

 日本への人の流入に関しては、OECDをはじめとする国際機関の影響を受けながら、経済 団体、関係省庁などさまざまな機関が、それぞれの立場からそれを促進したり抑制したりする動きを見せてきたが、各機関の動きは必ずしも調和しているとは言 い難いし、それらの動きが日本の公教育にいかなるインパクトを与えうるのかについて、各機関が十分に自覚しているとも言い難い。

 こうし た中で、国外から日本への人の流入が日本の公教育に与える最大のインパクトの一つが、言語の問題であろう。人の移動と言語という観点からすれば、世界にお ける覇権的言語である英語教育も重要な争点となりうる。しかし、今日の日本の教育現場においては、英語に親和性が高く、日本の公教育に頼らずとも国際的に 通用する教育を受けることのできる部分(特にエリート層)は、さしたる深刻な問題に直面しているとは言えない。むしろ、英語以外の言語を第一言語としてお り、日本においてその学習環境を保障されない人々、あるいは、定住に充分な日本語の能力を日本の公教育から保障されずに放置されている人々の日本語教育に こそ光が当てられる必要があるだろう。

 確かに、日本でも、とりわけニューカマーの教育研究が盛んになって以降、学校教育における日本語 教育の確立や母語教育の必要性、また地域における日本語支援ボランティアの実践などについて、繰り返し報告されてきた。それらの実践や研究において「共 生」といった理念が掲げられることもめずらしくない。しかしながら、それらの多くは、意図するしないに関わらず、既存の国家、学校、地域社会への「統合」 を最終的な目的としてきたことは否めないのではないだろうか。人の移動とそれにともなう異種混淆的な言語的文化的実践への注目がわれわれに要請するのは、 それとは逆に、「統合」という概念そのものの検討にほかならない。換言すれば、「日本」、「日本人」、「国語」といった、近代日本の公教育を支える自明の 前提とされてきた諸々の枠組みの正当性を、根底から問い直すことである。さらには、そうしたナショナルな枠組みに依拠して行なわれてきた教育研究に、根底 的な視座の転換を要請するものであるとも言えるだろう。

 本課題研究では、以上の問題意識に立ち、移民の教育と言語に関する政策や関係諸 機関により発表される政策提言の布置状況を整理したうえで、各種の政策や提言の背後に置き去られている観のある、移動する当事者の諸実践に注目し、教育政 策・言語政策、教育実践、教育研究のなかで自明視されてきた境界枠を問い直すことを目的とする。さらに、それを通じて、人の移動をも前提として含み込んだ 公教育の可能性について考えてみたい。

 

【構成】

司会   児島明(和光大学・会員・研究委員)
報 告①「国際人口移動と教育」 
      佐久間孝正(立教大学・会員)

報告②「移民政策と教育の現在--グローバル基準と日本 の実態 --」
      定松文(恵泉女学園大学、会員(近日入会予定))

報告③「移民の環流と国民国家のゆらぎ」
       高藤三千代(帝塚山大学、立命館大学・非常勤講師、会員)

コメンテーター ましこひでのり(中京大学・会員・研究委員)

 

 課題研究2「子どもの貧困と教育」

 【趣旨】
 近年のグローバル経済化による多国籍企業化とそれを推進する新自由主義政策(=「構 造改革」)の下で格差が拡大している。それは、非正規雇用や「ワーキングプア」の拡大をはじめ、生活保護受給者の増大、医療保険証をもてない人々の増加と いう現象として表れている。今や「格差」は単なる「相対的な格差」ではなく、必要最低限の生活さえも保障されないという「絶対的な格差」=「貧困」という 事態として現れているといえよう。

 学校教育に関しても、就学援助率の増大、高校授業料の減免申請の拡大、入学金が払えないゆえの高校の 入学式への出席停止などが新聞レベルでも話題となっている。就学援助に関して言えば、就学援助率と学力との相関が指摘されており、そこには「貧困と学力」 問題をはじめとして、さまざまな教育問題が伏在していることが予想されよう。

 そこで、貧困層(底辺層、生活困難層、ワーキングプア層) の子どもとその家族の生活実態の解明、学校教育との関連、および進学や就職などの進路との関連の解明を行い、それを踏まえた学校や社会の支援のあり方の検 討が急務であると考え、本課題研究を設定したい。尚、本課題研究は2年の継続が予定されており、1年目は「子どもの貧困と教育」と題して、貧困の「実態把 握」に焦点をおき、2年目は、「貧困と学力」や学校での取り組みの検討など、より学校内部へ視点を焦点化するという方向性が考えられる。

さ て、課題研究を設定するにあたり、いくつかの研究課題を考えることができる。

①子どもの貧困の実態の把握。今日の貧困の「量的な広がり」 と「現代的な質」の把握をおこなうこと。例えば、主として福祉領域で把握されてきた生活困難層に集中した貧困実態と、2~3割に上るワーキングプア層にお ける貧困実態との同一性と差異に目を向ける必要性がある。また、母子家庭の貧困率の高さという日本社会の特質にも注目する必要があろう。

② 貧困と人間形成の関連の解明。貧困が子どもの家庭や学校生活や進学・就職の進路決定などの人間形成に与える影響を解明すること。教育社会学研究において は、すでに家族の貧困実態のメカニズムを「貧困の世代的再生産」として解明してきた。こうした研究視角を受け継ぎ、それを子どもの人間形成との関わりでど のように発展させ、貧困を断ち切る視点を確立することができるのか、より詳細な実態の把握とそのメカニズムの解明が課題となる。

③貧困に 対する教育・社会政策の検討。学校教育はこのような貧困の実態を前にして、何をすべきなのか、何をすることができるのか。学校と社会福祉との連携、教育政 策・社会政策の問題点の検討を含め、貧困対策の検討が求められる。

④教育社会学研究における「貧困問題」に対する理論的視角の捉え直し。 教育社会学研究は「教育の機会均等」という視角から教育における貧困・格差の問題点を指摘するというスタンスをとってきた。近代社会におけるもっとも基本 的なスタンスであることは言うまでもないが、このスタンスだけで「教育と貧困」問題が解決できるのかを考えたい。というのも、「貧困の再生産」状況を乗り 越えること=「教育の機会均等の実現」という理論的想定では、能力主義の徹底へ道を開くだけという側面をもつのではないか。      

  こうした弱点を乗り越えるために、「結果の平等論」が提唱されてきたが、その実現のためには、学校のあり方はもちろん、教育と福祉・社会保障・労働問題と の関連により踏み込んだ「教育と平等」の理論構築が求められるのではないだろうか。

 このようないくつかの課題を前提としながら、今回の 課題研究では、以下の3つの視点から「子どもの貧困と教育」の実態を考える報告をお願いする。

①学校現場から見える子どもの貧困実態とそ の支援の可能性。

②生活困難家庭の高校生の進路決定にみる貧困問題。

③母子家庭の貧困の実態と社会政策の問題点。

 

【構 成】

司会       小澤浩明(中京大学・会員・研究委員)
報告① 「学校現場から見える子どもの貧困実態とその支援の可能 性」
       西田芳正(大阪府立大学・会員)

報告② 「生活困難家庭の高校生の進路決定にみる貧困問題」
        大澤真平(北海道大学大学院・会員)

報告③ 「母子家庭の貧困の実態と社会政策の問題点」
        阿部彩(国立社会保障・人口問題研究所・非会員)

コメンテーター  久冨善之(一橋大学大学院・会員)

 

●  テーマ部会のお知らせ

 今回の大会では、かねてからご案内してきました「テーマ部会」を新設します。これは、フロンティア的テーマの開 拓や学会大会のさらなる活性化を図るために試行的に設置するもので、一般部会と同時間帯に設定されます。

 初年度にあたる今年度は、以下 の7つの部会(一般公募によるもの2件、研究委員会委員がコーディネーターをつとめるもの5件)を設定する予定です。本ブリテンと同時に送付される大会校 からの案内にあるように、研究報告を募集する際に会員の皆さんから、一般の部会で発表するか、下記のテーマ部会のいずれかで報告するかの希望をとります。 その後研究委員会において、コーディネーターと連携をとりながら、部会編成を煮詰めていきます。

皆様のご理解とご協力をよろしくお願いい たします。

 

テーマ部会1(31部会)社会化研究の最前線-リフレクションをどう捉えるのか?
 (コーディネー ター:高橋征仁(山口大学))
【趣旨】
 「社会化」の概念は、社会と個人の関係を説明する鍵概念として、教育社会学において中心 的な位置づけを与えられてきた。ところが理論面でみれば、1960年代の「社会化論再考」以降、この概念は長らく破綻したままである。「社会化」概念は、 「伝達」や「内面化」などのモノ・メタファーに依拠していたために、素朴な経験主義の枠組みを乗り越えられないでいる。もちろん、文化的再生産や内面的支 配の問題など、社会化研究を支えてきた社会学的なリアリティまでもが失われたわけではないだろう。しかしながら、そうした問題領域においてこそ、素朴な経 験主義によって説明するのではなく、「リフレクション」の抑制や機能不全、変容などを主題化していく必要があるのではないだろうか?「社会化」概念も、そ うした社会化研究の試行錯誤をもとに再検討されなければならないだろう。以上のような問題意識にもとづいて、このテーマ部会では、「リフレクション」に照 準を当てた社会化研究を広く募集することにしたい。

 【キーワード】

 「社会化」概念/伝達/内面化/リフレクション

 

 テー マ部会2(32部会)「現代の若者」とジェンダー
(コーディネーター:大滝世津子(鎌倉女子大学))
【趣旨】
  これまで「ジェンダーと教育」研究は、男性支配において生じるジェンダーの再生産メカニズムを明らかにしてきた。しかし、男女雇用機会均等法や家庭科の男 女共修化など男女平等に向けた施策の進展を背景に、1980年代から現在にかけて、日本社会におけるジェンダー構造は大きく変化してきている。そのため、 若い世代は「ジェンダーと教育」研究が始まった当初に想定されていたのとは異なる社会的状況の下で成長してきていると考えられる。

 で は、これからの若者世代におけるジェンダー問題にアプローチする上でも、従来の研究の枠組みは依然として有効なのであろうか。あるいは、その前提や枠組み において何らかの転換が求められているのだろうか。

 以上の問題意識にもとづき、本テーマ部会では、「ジェンダーと教育」研究を常にアッ プデイトさせ、さらに発展させていくための足がかりを築くべく、若い世代のジェンダー意識に関わる様々なテーマの研究発表を募りたい。現代の若者のジェン ダー意識に関わる報告をもとに若者のリアリティを探るとともに、変容するジェンダー秩序やそのダイナミクスに対する研究者サイドの認識を更新する契機とな るような部会をめざす。

 【キーワード】

ジェンダー/アイデンティティ/ジェネレーションギャップ/性役割意識/再生産 /若者

 

テーマ部会3(33部会)学力格差の構造を問う
(コーディネーター:川口俊明(福岡教育大学))
【趣 旨】
 現在、日本では学力をめぐる議論が活発になされている。教育社会学会も例外ではなく、昨年度の学会大会では、「学力問題の現在」と題したシ ンポジウムが開かれ、盛況な盛り上がりを見せた。しかし、「学力」というのは多義的かつ論争を孕んだ用語である。勢い、学力をめぐる議論では、焦点を十分 に絞れないまま、議論が錯綜する場面が多々見受けられる。

 そこで本テーマ部会は「学力格差の構造を問う」と題し、これまで教育社会学が 重点を置いてきた「学力格差」の問題にとくに焦点を当てた議論を展開したい。具体的には、「学力格差」を「家庭」「地域」「学校」など、いくつかのモーメ ントをもつものと考え、それぞれの研究者の分析結果を議論の素材として、「学力格差」問題の理論的解明をはかることを狙っている。実態把握のみならず、分 析方法をめぐる議論や政策的介入の方向性をめぐる議論に話を進めることができれば、理想的である。

 
【キーワード】

学 力格差/家庭間格差/地域間格差/学校間格差/分析手法/政策的介入

 


テーマ部会4(34部会)ニューカマーと 近接領域
(コーディネーター:清水睦美(東京理科大学))
【趣旨】
 1980年代から急増した「ニューカマー」 に関する教育社会学分野での研究は,その実態把握を試みる研究が数多く積み重ねられ,研究の課題設定や方法も定式化してきている。そうした研究を継続する 必要性は依然としてあるものの,一方で,日本に住む外国人の定住期間が長くなるにしたがって,かれらの生活は,ニューカマー固有の問題と見なされるものの 領域を超えて広がりをもつようになっており,研究もそうした方向に開かれた課題設定を試みる必要がある。そうでなければ,研究によって枠づけられた固有 性・特殊性にニューカマー問題を閉じ込めてしまう可能性が危惧されるのである。

 こうした警戒感からテーマ部会として「ニューカマーと近 接領域」を設定した。教育社会学や社会学の分野で従来から取り上げられてきた領域と,ニューカマー領域を横断するような研究に取り組んでいる方々!! 報 告に名乗りをあげていただいて,「ニューカマー」領域の課題設定の広がりを検討する部会にしていきましょう。

 
【キーワード】

  ニューカマー/近接領域(例:ジェンダー,学力,特別支援教育,世代,貧困など)

 

 

テーマ部会 5(35部会)大学生調査の目的・方法・課題
(コーディネーター:吉田文(早稲田大学))
【趣旨】
 近年、大学 生を対象とした各種の大がかりな調査が実施されるようになった。それらは、個別の大学における学生生活実態調査や学生文化研究とも異なり、アスティンの提 唱するI-E-Oモデルを援用する場合が多く、大学という環境が学生にどのような影響を与えるか、学生は大学生活のなかでどのように変容するかを明らかに することを目的とする点に共通性がある。

 同一年齢人口の約半数が「大学生」となる時代において、「大学生」と一括りで語れなくなった多 様性を見極め、学生に付加価値をつけ、大学のアカウンタビリティを高めるために、大学教育をどのように編成するかという現実的な課題が背景の1つにあると いてよいだろう。ただ、これらの大学生調査は、目的、対象、調査方法は多様であるにもかかわらず、ややもすればそれらを踏まえないままに知見のみが先行 し、大学教育の処方箋とし利用されているきらいがある。

 そこで本テーマ部会では、大規模な大学生調査を実施しているグループから代表的 なものを3つ取り上げ、調査の目的・対象・調査方法に立ち戻ってそれらを比較検討し、教育社会学研究としての意義と課題を考察することをねらいとする。

 
【キー ワード】

IOEモデル/調査方法/学生文化/学習成果/アカウンタビリティ

 

 
テーマ部会 6(36部会) 臨床的学校社会学のいま
(コーディネーター:志水宏吉(大阪大学))
【趣旨】
 今日の学校を取 り巻く社会環境の変化のスピードは、これまでになく早い。グローバリゼーションに即応した教育システムのあり方をどう構築するのか、PISA型の学力にど う対応するのか、「格差」の現状をどう克服するのかなどと、課題は山積している。

 ひるがえって、教育社会学における学校研究の分野で も、新たなトレンドが生じつつある。その中でも、本部会で注目したいのは、「現場」との連携のうえで推進される実践的あるいは臨床的な社会学的研究の可能 性である。近年、従来の「実証的」学校研究とは一線を画す性格をもった諸研究が生み出されつつある。

 本部会では、それらのうちのいくつ かを議論の俎上にあげて、学校研究の新たな可能性と課題について考究し、フロンティア的領域の形成を試みたい。

 
【キーワード】

学 校社会学/実践的・臨床的アプローチ/アクションリサーチ/コラボレーション

 

 テーマ部会7(37部 会)教育と社会保障
(コーディネーター:新谷周平(千葉大学))
【趣旨】
 教育社会学は、メリトクラシーや階層 間格差の是正など、「教育の機会均等」をその理論的な支柱の一つとしてきたが、それに伴って、社会保障(≒労働や財の再分配)をほぼ射程外としてきた。し かし、現在直面し、また今後も続いていくであろう生産過剰による不況下では、いかに機会均等を保障しようとも、多くの人々の生活の安定を図ることはできな い。それだけではなく、機会均等論は、それがいかに理論的には平等を志向しようとも、現実には人々の教育を通した上昇移動へのアスピレーションを部分的に (階層偏在的に)掻き立て、また自己責任論と共振することを通して、結果として不平等とその正当化に寄与してしまう。それゆえ、機会均等論の限界を指摘し ながら、労働や財の再分配を理論的に位置づけ、政策的・実践的に実行していく方途を探らなければならない。関心を共有する理論的・実証的・実践的な研究発 表のエントリーを期待したい。

 
【キーワード】

労働と雇用/学校から職業への移行/キャリア教育/新自由主義/ 社会的排除/生活保護/ワーキングプア/ベーシックインカム






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