第62回大会の課題研究について

第62回大会では、2つの課題研究の部会を設定します。
その趣旨と部会の構成が決まりましたので、お知らせいたします。

※『ブリテン第151号』にも同様の記事を掲載しました。

課題研究1
「子どもの貧困と教育(2)-学校で何ができるか-」


【趣旨】
 今日、貧困、格差問題がさらなる深刻化の様相を示している。貧困、困難な状況のもとで育つ子どもの存在について社会的関心が高まり、政府も公式統計の数値を公表するに至った。「子ども手当」「高校授業料無償化」などの施策が実施されようとしているが、困難な状況にある子ども達にとってそれらが有効な支援策となるのかについては、疑問の声も少なくない。「子どもの貧困と教育」に焦点化し、実態を踏まえた施策が求められている。

 昨年度の課題研究は、貧困、不安定な生活状況のもとで育つ子どもの実態を、母子家庭、小中学校、高等学校それぞれに焦点を当てた報告によって確認した。今回はそれらの知見を踏まえ、特に学校教育の場で何がなされるべきなのかをテーマとする。

 「学校で何ができるか」を考える際、学習・学力面の支援が最重要のテーマとなることは言うまでもないが、学習の前提である生活面での課題、困難な状況をそのままにした学力の定着、向上はあり得ない。生活面での支援が不可欠であり、福祉分野との連携が不可欠のテーマとなる。また、学習支援についても、生活実態に即したものであることが求められる。そこで、貧困、さまざまな形で不利、困難な条件のもとにある子ども達の生活に焦点化し、学校教育の場でどのような働きかけが可能かを検討課題としたい。

 登壇者として予定しているのは、高田一宏(兵庫県立大学)、山野則子(大阪府立大学)、山田勝治(大阪府立西成高等学校)の3氏である。討論者には、青木紀氏(名寄市立大学)を予定している。

 高田氏は被差別部落の子どもの教育問題をテーマとし、「教育コミュニティ」の重要性を提唱するとともに、低所得者の子ども達を対象としたアメリカの「ヘッドスタート」計画の成果についても研究を進めている。貧困問題が地域的に集中した形で現れる事態を踏まえれば、日本の公教育においても、一律の条件整備ではなく、特に困難な地域あるいは対象者を設定した積極的差別是正措置(アファーマティブアクション)を検討すべき時期に至っているのではないだろうか。また、就学前の段階から、親への生活支援も含んだ施策を実施することの有効性も検討すべきであろう。高田氏からは、欧米の取り組みと大阪の教育実践を踏まえて、就学前段階をも視野に入れた報告をお願いしたい。

 山野則子氏は児童福祉を専門とする研究者であり、現在はスクールソーシャルワーカーを養成し学校に導入する事業を主導する立場にある。困難な条件の下にある子ども達が抱える生活面のさまざまな課題は学校に持ち込まれることになる。それら福祉的な課題に対して、従来は教師による対応が求められてきたが、その深刻さの度合いが深まるなかで福祉の専門職としての知識と働きかけが不可欠なものと認識され、ソーシャルワーカーの導入が進められている。今回は、スクールソーシャルワーカーの役割、メリットを紹介していただくことに加え、教育と福祉の連携、協働によって何が可能となるのかについて考える素材を提示していただく。

 もう一人の登壇者は、大阪府立西成高等学校長山田勝治氏である。大阪市は産業構造の変動のなか貧困層・生活不安定層が比較的多い地域となっているが、そのなかでも西成区は困難な条件の家庭が多い。そこに位置する西成高校は、さまざまな「しんどさ」を抱えた生徒が多数通学する学校である。同校では、社会の仕組みとその中で自分たちが置かれている立場を生徒に認識させ、困難に立ち向かう力量を育てることを目指す「反貧困学習」が取り組まれている。同校の実践を紹介いただき、生活と学力をストレートにつなげる取り組み、「格差の連鎖を断つ」教育の可能性を考えたい。

 貧困問題に対して学校教育の場で何をなすべきか、3本の報告と青木紀氏のコメントを踏まえて、参加者とともに考えを深め、求められる働きかけの方向を探る機会としたい。


課題研究2
「教育調査の在り方を問い直す-量的研究の課題と展望-」

【趣旨】
 日本における社会調査の在り方には、昨今、大きな変化がみられる。たとえば、社会調査士の資格化とその認定大学の増加、全国レベル・自治体レベルの各種調査の増加は、量的研究が社会の広範に広がりつつあることを示唆している。それは教育においても例外ではない。「全国学力・学習状況調査」をめぐる議論からも明らかなように、教育論議において統計分析の結果が資料として使われる機会は増加している。その一方、容易に統計分析ができるソフトウェアの普及や、社会全体における調査ブームは、ある意味で「安易な」調査や研究の増加につながっており、こうした問題点を指摘する発言もしばしばみられる。量的な調査や研究が一般的になりつつある現在、その在り方自体がより厳しく問われていると言えよう。こうした状況を鑑みれば、教育を量的データで語ることについて先導的な役割を果たしてきた本学会においても、量的研究の意義と課題を改めて議論することが必要になっているのではなかろうか。

 本課題研究では、次の二つの視点から、教育社会学における量的研究を再検討してみたい。一つは統計学的見地からの方法論的妥当性であり、もう一つが教育実践的・政策的な応用可能性である。もちろん、統計学的にも十分に妥当であり、研究成果の応用可能性も高いことが望まれるが、この二つはときに対立関係となる。統計学の理論を厳密に適用しようとした場合、多くの調査や分析は、統計学的な仮定を十分に満たしていないことになり、得られる知見はごくわずかに留まってしまう。一方、教育実践・政策への応用可能性に焦点化するあまり、統計学的な制約や仮定を軽視して知見を急いでしまうと、教育というデリケートな問題に対して、誤った提言をしてしまうことになりかねない。多くの研究者は、方法論的妥当性と応用可能性のあいだで、それぞれの立場や制約を踏まえ、妥協点を見出しながら研究を進めているのだろう。こうした方法論的妥当性と応用可能性の問題は、今のところ、それほど注目を集めているわけではないが、量的研究が広まる一方で分析手法が精緻化している現在、改めて検討が必要な課題といえよう。

 第一報告では、教育社会学のこれまでの量的研究を俯瞰する立場から中澤渉氏(東洋大学)に報告をいただく。教育社会学において、これまでどのような量的研究が蓄積されており、そこにどのような意義や課題が存在するのかという点が主な議題となる。第二報告では、研究成果の応用可能性を重視する立場から西本裕輝氏(琉球大学)に報告をいただく。量的研究を教育実践や政策に生かすという視点に立ったとき、研究者として、そこにどのような葛藤や課題があるのか、といった点が主な議題となる。第三報告では、量的研究法の専門家として統計学者である星野崇宏氏(名古屋大学)をお招きして報告をいただく。国内外の最新の統計学の視点に立ったとき、教育社会学研究にどのような課題が見出されるのか、そして、それを乗り越えるための具体的な方策は何か。主に方法論的見地から検討していただくのが目的である。これら三つの報告をふまえて、今後の教育社会学における量的研究の展望を考えたい。なお、討論者には、武内清氏(上智大学名誉教授・放送大学客員教授)を予定している。


大会情報

過去の一覧>>

学会奨励賞

締め切り: 2018年3月7日(必着)
(今年度の受付は終了しました)


▲このページのトップへ戻る