第62回大会のテーマ部会について

 フロンティア的なテーマの開拓、学会大会のさらなる活性化を目的に前年度の大会から試行しています「テーマ部会」を、今年度の大会でも開設します。先に会員の皆さまからテーマを募集しましたが、その結果、2つのテーマをお寄せいただきました。それに研究委員会から提案するテーマを加えて、今年度は4つのテーマでもって、発表者を募集します。

 「テーマ部会」での発表をご希望の方は、『ブリテン151号』とともに送付されています「大会のご案内」に沿って、発表の申し込みを行ってください。昨年度と異なるのは、それぞれ、部会を構成できるだけの申し込みがあった場合に、部会を開設するという点です。申し込み件数が少ない場合には、当該の部会は開設しません。部会が開設できるよう、テーマに関係する発表をお考えの皆さまには、是非ともテーマ部会での発表をお申し込みくださるよう、お願いいたします。

 なお、もし、部会が開設できなかった場合、当該の部会に申し込んでいただいた方には、一般部会で発表していただくことになります。発表の申し込みにあたっては、希望発表部会のひとつは、必ず、一般部会から選択するようにお願いします。

 テーマ部会については、提案者にコーディネーターさらには司会をお願いすることにしています。また、発表者が互いに発表内容を事前に知ることができるように、発表要旨の交換など、研究委員会でお世話することになっています。さらに総括討論の時間を十分にとれるように、プログラムを工夫することになっています。皆さまの積極的な申し込みにより、4つのテーマのすべてにおいて部会が開設できることを願っています。


4つのテーマの設定の趣旨は、以下の通りです。
※『ブリテン第151号』にも同様の記事を掲載しました。

テーマ部会1
「若者支援の現状と課題」
           提案者:本田由紀(東京大学)

【趣旨】
 1990年代初頭以降、持続的な経済成長が困難化する中で、かつては家族-教育-企業のトライアングルによって堅固に守られていた日本の若者のあり方は、大きく変化を遂げている。出身家庭が保有する諸資源の多寡が教育達成に直接に反映され、自由化と管理が同時に増大する学校現場では排除のリスクが増大し、教育から仕事への移行はきわめて不安定化している。そのような状況下で、居場所も行き先も見失った若者―不登校、ひきこもり、貧困、不安定就労などの状態にある若者―が、従来よりもはるかに大きな規模で現れるようになっている。
 こうした現状に対して、様々な若者支援の試みが、全国的な制度的な枠組みという面でも、またそれぞれの地域における自治体やNPO等による自生的な動きとしても、開始されている。それらの支援は、内面的な回復や社会関係の再構築をめざすものから、職業訓練や就労を目的とするものまで、多岐にわたっている。それらの支援は苦境にある若者を支える重要な役割を果たしつつあり、社会全体にも波及する新しい動きとしての可能性をはらんでいる一方で、個々の支援の内容・方法の偏りや財政基盤の脆弱さ等の点で様々な課題を含んでもいる。
 本部会では、マクロ(国家レベル)・ミドル(各地域・各機関レベル)・ミクロ(支援の現場における相互作用レベル)という各位相における若者支援の現状と課題に関する量的・質的実証研究の成果を持ち寄り互いに検討し合うことにより、今後の若者支援の在り方を改善・充実してゆく具体的な方途を探ることを目的とする。
【キーワード】居場所 職業訓練 就労支援


テーマ部会2
「社会化研究の最前線~相互性をどう捉えるのか?~」
   
 提案者:高橋征仁(山口大学)

【趣旨】
 現在、社会化研究において最も大きな影響を与えつつあるのは、認知科学や神経科学、進化心理学・人類学など隣接科学の急速な発展であるといってよいだろう。これらの新しいアプローチは、人間が白紙として誕生し、一定の文化を伝達されて、社会の成員になるという従来の社会化研究の枠組みに大きな変更を要求している。それだけでなく、これらの隣接科学の発展は、社会化研究という学際的課題において、社会学がどのような独自性を発揮できるのかという学問的アイデンティティの問題をも喚起している。
 このような問題意識を背景として、昨年度大会では、「社会化研究の最前線~リフレクションをどうとらえるのか?」と題するテーマ部会を開催した。社会化研究の基本的視座や「社会化」概念の内実に深くかかわるテーマを取り上げ、現在の調査データに照らして検討していくことが、社会化研究の最前線を切り拓いていくことにつながると期待したからである。今年度大会においても、同様の趣旨で、社会化研究における「相互性」というテーマを取り上げ、議論したいと考えている。
 この「相互性」も、「リフレクション」同様、1960年代の「社会化論再考」の動向において提起された論点の一つであった。当時、この「相互性」という論点は、社会化する側(親や教師)が、一方向的に、社会化される側(子ども)に影響を与えているわけではないという形で提起されていた。その後、社会化の双方向性や大人の側の2次的社会化に関する研究が期待されたが、必ずしも十分に展開されたわけではなかった。
 またこのテーマには、研究者の記述・分析枠組みのあり方や循環的影響関係の分析の難しさという方法論的問題も含まれるだろう。理論的・概念的レベルでは、自律的な主体としての個人が、相互的な依存関係の中からしか生まれないというパラドクスを処理するためのモデルが不可欠だろう。さらに、現実的な社会問題に目を転じるならば、青少年が自律的な存在となるために、どのような社会的支援がありえるのか(または、ありえないのか)という議論も展開できるだろう。
 本テーマ部会では、これらの観点から社会化の「相互性」を問い直すことによって、社会化研究の刷新を図ることにしたい。
【キーワード】相互性 自律性 支援


テーマ部会3
「歴史研究の可能性」
       提案者:研究委員会(木村涼子・橋本鉱市)

【趣旨】
 歴史研究は、これまで教育社会学発展の一翼を担ってきた。1970年代から90年代にかけての教育社会学者による歴史研究は、近代日本における学校教育制度の確立および学歴の社会的機能の展開、教養主義の発達と変容などの教育に関わる社会変動について、データを基にその実像を明らかにするとともに、それらが近代的な産業構造、社会階層ヒエラルキーの形成にいかに貢献してきたか、また、近代家族や子ども観といかなる関わりをもってきたかなど、社会学的な概念・枠組みを用いてダイナミックな分析をおこなってきた。それらの研究は、教育社会学の分野にとどまらず、歴史研究全体に対してもインパクトを与えてきたと言っても過言ではなかろう。
 ただ、これまでの教育社会学の歴史研究が射程としてきたのは、幕末・明治維新から戦後、あるいは戦後の高度経済成長期あたりまでであることが多かった。戦後の世界体制の基盤であった冷戦構造が崩壊、日本においても戦後55年体制が崩壊した現在、いわゆる「ポスト近代」「後期近代」といわれる時期を、本格的な歴史研究の対象とする時期が来ているのではないだろうか。
本テーマ部会では、具体的な歴史研究の報告を3~4本ほど募集し、それぞれにご報告をいただいたのち、今後の歴史研究の可能性、従来の概念や分析枠組みが「ポスト近代」を研究対象とする場合においても有効であるのか、あるいは新たに必要とされる社会学的な「道具」や視点は何であるのかについて、議論することをめざす。
【キーワード】近代化 後期近代 リフレクション


テーマ部会4
「『共生』と教育の課題」
            提案者:研究委員会(岡本智周)

【趣旨】
 日本の教育における「共生」への取り組みは30年以上の歴史をもち、かつ1990年代の半ば以降には、これに社会の側からの要請が強く作用するようになった。その背後にあるのは、国際化、グローバル化、社会的価値の多元化などの変動のなかで、ある時には近代的理念に導かれて、またある時には産業主義に突き動かされて否応なく個人化する人間存在を、再び繋ぎとめようとする構想である。「共生についての教育」には「教育を通した共生社会の実現」という主題が付け加えられ、教育実践と研究とが積み重ねられている。
 もちろん教育社会学や社会学の分野においては、「共生」の内実が批判的にも検討され、そこで志向される「相互理解」や「社会統合」が、実際には「教化」や「同化」に他ならないことが多々あることが詳らかにされてきた。「共生」という掛け声自体が、少数者の立場を尊重し理解する姿勢を示しつつも、実際にある格差や差別を曖昧化したままにするように機能していることを、批判する論調もある。多元的な社会的価値と共生の理念とを両立させることがいかに困難であるかは、これまでの議論で十分に指摘されてきたといえる。
 しかしその困難さがありながらなお共に生きざるを得ないのが人間社会であるならば、多様性の尊重と不即不離に要請される社会的凝集性について検討し続けることもまた、社会科学研究にとって不可避の課題となる。折しも2008-09年の学習指導要領改訂では、「生きる力」の再定義に際して「共に生きる力」の意義が提唱されるようになった。今般掲げられるその種の理念をあえて活用し、これまでの共生教育論、共生社会論が指摘してきた教育の問題や限界を乗り越えていこうとすることにも新たな意味が生じよう。「共生」をめぐる議論が詳らかにしてきた教育の制度・内容・方法における問題を基点とし、共に生きるための教育のさらなる課題や、利用可能な資源の活用についての討議へと繋げたい。
【キーワード】個人化 共生社会 「共に生きる力」


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(今年度の受付は終了しました)


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