九州教育社会学会 第55回研究集会報告

日時:2014年12月7日(日)13:00~15:00
場所:長崎大学文教キャンパス

報告①
報告者:山口季音氏(関西大学大学院)
報告題目:「児童養護施設職員の文脈依存的な学習支援」

報告②
報告者:白坂正太氏(九州大学大学院)
報告題目:「福岡市放課後等遊び場づくり事業における現場責任者の役割規定に関する一考察」

 今回の研究集会では、子どもと共に、活動する現場に入り、参与観察を行っている2名の研究者による報告が、行われた。
 まず、山口季音氏(関西大学大学院)は、「児童養護施設職員の文脈依存的な学習支援」と題して報告を行った。氏は、人的な構造的制約のある大舎制の児童養護施設での教育に焦点を当て、施設職員の学習支援の実態と課題について示した。氏によると、学習場面における施設職員の働きかけは、宿題等課題に関して、「画一的」で、軽食時間の設定に関して、「場当たり的」で必ずしも一貫性がないが、この働きかけは、施設内の学習ルールを維持する上で、合理的な方略であるという。ただ、施設の教育環境を維持できても、個別の子どもへの支援が十分とはいえない点を指摘した。そして、今後、「子どもの貧困と教育」に関する研究が蓄積され、児童養護施設の教育が注目される中で、施設内部の文脈を考慮した子どもの学習状況や支援の形態を明らかにしていくことの重要性を示した。
 本報告に対し、会場から、児童養護施設での調査の難しさに配慮しつつも、研究において、施設の負の側面に着目すべき必要性や施設を類型化した分析をすべき、という指摘等があった。
 次に、白坂正太氏(九州大学大学院)が、「福岡市放課後等遊び場づくり事業における現場責任者の役割規定に関する一考察」と題して報告を行った。氏は、福岡市の委託事業という制度的な制約がある中で、子どもの自由な遊びを構築するための具体的な取組みと現場責任者等が果たすべき役割について示した。氏は、プレイワーカーとして、現場に参与しているので、子ども側と運営事業側の両立場に配慮することができるという特異な位置づけにあることを述べ、現場では、両立場の利益を比較衡量し、課題を解決していく必要性を示した。
 本報告に対し、会場から、制約された状況下で、子どもの自由な遊びを確保するための実践知を示す必要性や子どもの成長過程に関する社会的分析をすべき等の指摘があった。
 今回の両研究報告を通じて、現場における調査者の位置づけにより、「参与観察」の意義が異なる点、教育社会学の希薄な当事者性を補足するために、当事者的な立場から実践知を形成する必要性について、議論が展開された。この他にも、各研究報告に関する今後の課題等の示唆を含め、活発な議論が行われ、盛会のうちに散会した。
 本学会では、2015年度より、『九州教育社会学会紀要』を刊行する等、今後、学会活動を活発にしていく予定である。

(九州教育社会学会事務局 坂巻 文彩)


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