第87回日本社会学会大会・テーマセッションの詳細

投稿日:2014年05月12日 カテゴリー:お知らせ  投稿者:学会事務局

【1】社会学における進化論的アプローチの可能性
1. コーディネーター:桜井芳生(鹿児島大学)
2. 趣旨:
 「社会学の危機」をめぐる論調のなかで、無視できない論点は、コスミデス・トゥービーによる、「標準的社会科学モデル(SSSM)」批判の議論とおもわれる。社会科学においても進化生物学的な視点が不可欠であるという主張を体系的かつ精力的におこなったのは、The Adapted Mind (1992) に収録された彼(女)らの “The Psychological Foundations of Culture” であった(Google Scholar による引用回数2664)。このなかで、彼(女)らは生物学的人間認識を基盤とし、自然科学と社会科学とをつなぐ試みを提唱した。
 1990 年代以降、自然科学か社会科学かという 2分法は、大きく揺らぎ始めている。というのも、進化心理学や社会神経科学、行動遺伝学など、自然科学的な手法にもとづく人間行動や人間社会の研究が急速に発展し、大きな成功を収めてきたからである。そして、それに伴って、政治学、経済学、人類学、心理学、教育学、言語学などの既存の研究領域でも、進化論をベースとした大規模な地殻変動が生じている。
 これらの新しい進化論的アプローチの躍進は、脳イメージングやゲノム解読、コンピュータ・シュミレーションなどの技術的向上だけによるものではない。生物学的なるものと社会科学的なるものとが交錯する広大な領域に眼を向け、人間行動や人間社会の複雑さや戦略性を解き明かそうとしている点でも、旧来の進化論的アプローチからは大きな転換が図られている。たとえば、心のモジュール性やマキャベリ的知能仮説、心の理論、認知的ニッチ、互恵的利他主義、進化ゲーム、文化・遺伝子共進化などのアイデアは、人間社会の複雑性に迫るうえで非常に魅力的であり、既成の人間観や社会観を大きく塗り替える可能性を秘めている。
 このテーマセッションでは、このような観点から、社会学における進化論的アプローチの可能性とその問題点について議論していくことにしたい。

3. キーワード:進化、遺伝、文理融合、健康社会
学、ブレインサイエンス
4. 使用言語:主に日本語(英語の個別発表も可)

【1e】Possibilities of Evolutionary Approaches in Sociology
1. Coordinator: Yoshio SAKURAI (Kagoshima University)
2. Description:
 Cosmides and Tooby (1992) asserted that evolutionary approaches should be needed even in sociology and social sciences (The Adapted Mind). In this book, they advocated that we, sociologists, should take the approaches based on the biological cognitions about human beings by which we can bridge between natural sciences and social sciences. At the 1990s, the dichotomy, that is natural sciences or social sciences, began to totter. The evolutionary psychology, the social neuroscience, the behavioral genetics and etc. had success. That had investigated human behaviors and societies based on natural scientific approaches. It is said that the theories and findings of the evolutionary approaches have applications in many fields, including economics, environment, health, law, management, psychiatry, politics, and literature. They are trying to investigate the very large fields where the biological and the social scientific interact with each other. They are trying to investigate about the complexities or strategies in human behavior or human societies. It seems that the evolutionary approaches have many possibilities to improve sociological researches and theories. In this session, I would like to have presentations and discussions about possibilities of evolutionary approaches in sociology.

3. Keywords: evolution, genetics, interdisciplinary approaches between social and natural sciences, sociology of health, brain science
4. Language: Mainly Japanese, but English presentations are welcome.

【2】マンガ研究と社会学の接点を探る――マージナルなマンガ・マージナルな社会学
1. コーディネーター:茨木正治(東京情報大学)
2. 趣旨
 マンガ研究、社会学研究もその研究対象の広さは論を俟たない。しかし、その多様性がかえって、分析視角の画一化あるいは独善性を招いてはいないであろうか。時流を作る「中心」の研究にはそこへの求心化に伴って当該部分における研究の深化は進むが、反面そうした領域の迎合するための研究には画一化が進行する。それに対して、「周縁」には個別化が進み、相互の交流は困難になっていく。いわば、大きさの異なる(影響力の異なる)「タコツボ」化が進行しているのではないか。これは、研究者の視点や研究領域の問題だけではない。現代の政治・社会ないしそこに属する人々の意識の中に、上に述べた「タコツボ」のヘゲモニー争いが表れているのをみれば、対象とされる研究領域それ自体にも起こりつつある問題であるともいえる。
 こうした問題意識に基づき、本テーマセッションでは、マンガ研究と社会学の接点を、マージナルな視点、領域に基づく考察・分析に求め、そこから社会・人間およびその相互作用に関する視点の多様化を図ることを目的とする。本セッションでいう「マージナル」とは、単なる物理的・客観的に「中心」から離れた「周縁」「境界」にある(を対象とした)諸研究――たとえば大量生産ルートに載らないマンガ作品(「見えないマンガ/語られないマンガ」)の研究のような――にとどまらない。いわゆる「中心」とみなされるマンガを対象にした研究でも、それに対する視点の新しさ(かつてのマンガ表現論の登場のような)がある研究も含まれる。また、テーマの含意には、マンガを素材にした社会学研究において、作品論(作品が描く政治・社会・文化等々の考察も含む)にとどまらず、マンガ生産の場の諸要素、読み手の研究、それらが作り上げる「共同体」( 世界 ) の研究など様々な接近方法と考察に基づく研究が含まれる。さらに、社会学領域については、ジェンダー研究、エスニシティ研究はもとより、産業・労働、家族、歴史、学史・学説、研究・調査(量的研究も含む)等々の研究も射程に入る。このような種々の研究の紹介と接点を求めるべく、上記の「中心」と「周縁」(「境界」)を意識した討論を行いたい。

3. キーワード:マンガ、社会学、マージナル、中心と周縁
4. 使用言語:日本語

【3】「移動する子ども・若者」をめぐる国際社会学――子ども・若者の移動経験に着目して
1. コーディネーター:小ヶ谷千穂(横浜国立大学)
2. 趣旨:
 かつて移民・移動研究は、「移動する人間は男性であり、女性はその家族である」という視点で進められてきた。しかしその後、女性の移動に着目し、ジェンダー視点を導入することで「移動の女性化」や「再生産労働の国際分業」といった、新たな局面を考察することが可能になった。本テーマセッションでは、移民・移動研究にさらなる視点を加えるべく、「移動する主体は成人であり、子どもはそれに付随して移動するものである」といった移民・移動研究における暗黙の前提をとらえなおし、「移動する子ども・若者」について社会学的検討を行うことを目指す。
 近年、世界的にも国境を越えて移動する子どもや若者への関心は強くなってきている。しかしながら、移民・移動研究における「子ども」「若者」の位置は、移住先での教育達成や、職業地位獲得などに関心が向けられる傾向が強く、移動する(した)子ども・若者自身の「移動経験」そのものに対する着目は多くない。日本においても近年、親の就労や結婚に伴って就学年齢で来日する子どもたちや、国籍法改正に伴って日本国籍取得が可能となった子どもたちの来日などが増えている。さらには、国際養子縁組や、国際カップルの間の子どもたちが複数回の国際移動を経験しながら成育するケースなども「国際移動と子ども」という視角から考察が可能であろう。また、そうした子どもたちの「子育て」において移民家族が抱える課題についても考察してみたい。
 本テーマセッションでは、教育社会学や学校研究などにとどまらない、社会学的移民・移動研究の立場から「移動する子ども・若者」について幅広い知見を蓄積することを目指したい。移民・移動研究においては、とかく「移民第 2 世代」の社会上昇やエスニック・アイデンティティに関心が寄せられてきたが、本テーマセッションで注目したいのは、移住先生まれの第 2 世代とは異なり、直接的な移動経験を持つ、いわば「1.5 世代」とも呼べるような子ども・若者である。日本にとどまらず、広く事例研究・理論研究、さらにはこうした移動する子ども・若者を研究対象にする際の方法論についての研究も含め、広く報告を募りたい。

3. キーワード:国際移動、子ども、呼び寄せ、1.5 世代、国際児
4. 使用言語:日本語および英語


【3e】Transnational Sociology of Migrant Children/Youths: Focusing on the Experience of Cross-Border migration

1. Coordinator: Chiho OGAYA (Yokohama National University)
2. Description:
 Migration studies used to stand on the perspective that " migrants are men and women are dependants of them." However, with the introduction of gender perspective, migration studies could have achieved the analysis of gendered dimension of migration , such as "feminization of migration" and "international division of reproductive labor." Learning from the gender and migration studies, this session will revisit the perception that "migrants are adults and children are dependants of them," and will explore the sociological aspects of the migration of children and youths. Reconstruction of migration studies through the analysis of the children's experience would be the purpose of this session. Recently, cross-border migration of children and youth have been paid much attention in the global scale. However, most of studies still tend to focus on the educational attainment of those young people in host society, not on their experience of migration itself. In Japan, several issues related to transnational migration of children have been observed recently; such as children adapted or invited by parents who marry in Japan, the illegitimate children's acquirement of Japanese nationality, and back-and-forth movement of the children from international couple etc. Besides, migrant families in Japan also face the issues of child rearing in host society's socio-cultural context. This session will try to discuss and broaden the view regarding the children's migration from the sociological perspective. Papers based on the case studies in different areas (not limited to Japan) are expected and methodological studies are also welcomed.

3. Keywords: transnational migration, children/youth, 1.5 generation, mixed children
4. Language: English presentations are welcomed, but discussions will be primarily in Japanese.

【4】食と農の社会学
1. コーディネーター:立川雅司(茨城大学)
2. 趣旨: 
 食と農の分野は、これまでの社会学研究、例えば農村社会学や環境社会学、地域社会学に関心をもつ研究者から関心を持たれることはあっても、ひとつの明確な研究領域として議論されることはほとんどなかったといえる。食べることは、日常生活におけるもっとも基本的な活動でありながら、社会学的省察を体系的に加える試みはなされてこなかったといえる。しかし、現代における食とそれを支える農は、大きくその様相を変化させ、社会学がこれまで関心を寄せてきた研究視点や問題意識から接近することが必要な現象が生じつつある。グローバル化やその対抗運動、ローカリティとその変容、環境問題や安全性との関連性、アイデンティティやジェンダー、科学技術とそのリスクなど、食と農をめぐる問題領域には、現代的な課題群が、単なる言説を超えて物質レベルにも表現されている。
 こうした社会的文脈を背景として、アメリカや欧州では「農業・食料社会学」(Sociology of Agriculture and Food)といった分野が形成されてきたと共に、学会の中でも専門の分科会が設けられ、研究蓄積や研究者のネットワーク形成が 1980 年代より進められてきた経緯がある。他方、日本国内においても 1970 年代から 90 年代の公害・農薬問題などに反対する社会運動(有機農業や反食品公害運動)が広がる中で、こうした活動から影響を受けつつ、食と農に対する研究が進められてきた。しかし、食と農の社会学という形での明示的な領域設定や知見の蓄積には結びついてこなかったといえよう。本セッションでは、桝潟俊子・谷口吉光・立川雅司共編『食と農の社会学』(ミネルヴァ書房、2014年)の出版などを契機としつつ、食と農の社会学がもつ現代性とその課題をめぐる下記のような論点に接近したい。具体的な事例分析からの新たな視角や理論的分析からの問題提起など、多角的なアプローチによる食と農の問い直しの試みを期待する。
●現代の食と農において問い直すべき社会学的課題
●食と農の社会学における方法論的検討
●食と農の社会学の領域設定をめぐる課題:統一性と多様性
●食と農の社会学の展望と課題

3. キーワード:食と農の社会学、農業・食料社会学、グローバル化、対抗運動、領域設定
4.使用言語:日本語

【5】パイオニアとしての社会学理論
1. コーディネーター:赤堀三郎(東京女子大学)
2. 趣旨:
 昨年の本学会大会でのテーマセッション「社会学理論への時代の要請/時代の要請の社会学理論」においては,社会学の理論・学説研究はいかに「時代の要請」に応えうるかという問いかけに対し,7本の研究報告が寄せられ,活発な議論が行われた.その成果として,次のことが確認できた.すなわち,理論・学説研究は,社会学という学問の根底にある想像力・構想力の活性化を通じて「時代の要請」に応えうるということである.昨年のテーマセッションで「時代の要請」という言葉を前面に出した理由は「社会学の理論・学説研究が瀕死状態にある」という現状認識からであった.今年もこの見立ては変わらないが,報告をまた募集するにあたり,次の見解を付け加えたい.そもそも,社会を対象とする認識枠組は,社会学的なものであれ,そうでないものであれ,すべて理論である.理論の如何はただちに社会のあり方に反映される.したがって,理論や学説を研究する学問的営為が窮地に陥れば,社会それ自体もまた,重大な危機に晒されるのだ,と.
 この見解を踏まえ,いかに「時代の要請」に応えるかという問いに沿って,今年はさらに歩みを進めたい.今年のセッションでは,「パイオニア(先駆者,先駆け)としての社会学理論」というテーマを掲げ,次のような研究報告を募集する.(1) 既存の理論・学説の中に,(当時の,ではなく)今日の時代にとっての「先駆者」を発見する研究.(2) 何らかの理論・学説に関して,隣接学問との関連づけや意外な対象への応用など,見方を変えることで「先駆性」を浮き彫りにする研究.(3) 今ある事象を説明したり解釈したりするような,いわば時代の「後追い」に終始する研究ではなく,既存の解釈図式それ自体を揺るがし,より精細な枠組を提供することで,時代の「先駆け」となろうとする研究.上記のような観点から,引き続き,社会学における理論・学説研究のもつ力やその意義について議論を深めたいと考える.

3. キーワード:社会学理論、学説研究、再帰性
4. 使用言語:日本語

【6】現代における「精神障害」の社会的構築
1. コーディネーター:大西次郎(武庫川女子大学)
2. 趣旨:
 本セッションの目的は現代社会において「精神障害」がどのように構築されているかを、「精神障害者」本人というよりは、彼(女)らを取り巻く環境面から導くことである。精神障害者の生き辛さの一部は社会の側からの要因に基づいており、それは近代日本において憂慮すべき状況にあった。長期・社会的入院、地域福祉の相対的軽視、社会防衛思想に基づいた隔離収容、精神科特例に端的に示される法・制度といった側面である。他方、2013 年度からわが国の医療計画の対象に精神疾患が加えられ、こころの健康はもはや国民に広く関わる問題と周知された。もとより統合失調症の軽症化、うつ病概念の拡大、認知症者の増加など、精神科医療を取り巻く昨今の状況は変貌の渦中にある。精神障害を(医療との関わりにおいて)逸脱やラベリング、クレーム申し立て等から解釈する試みは有用だが、それだけではメンタルヘルスの不調が広く蔓延し、スティグマすら場合によっては陳腐化しかねない中でなお残る、精神障害者の生き辛さを解釈するには十分でない。しかもこの状況は、疾患自体の変化、対象の認識枠組みの再編、どちらにも属さない量的な拡大といった複数因の混交を見ているのが内実である。精神障害が現代において、どう“社会的に” 構築されようとしているのか、メディア、社会政策、対人援助職などの観点から再検討する必要がある。
 コーディネーターは、日ごろ社会福祉学研究・教育の場に属する中で、社会学の視座が果たす役割を重視かつ評価する一人である。現代の社会福祉学は相談援助技術に支えられたソーシャルワーク実践への重点化により、ディシプリンとしての基盤を築くことに成功したように見える。しかし、個人に根ざした支援は医療・心理職との協働に好都合な一方、それ自体がエンパワーされた当事者からのピア活動によって、代替され得る宿命を持つ。その事実は、実践を根拠づける価値指向的な社会福祉学の体系内では葛藤を導きかねない。
 社会学は、対象となる現象のステークホルダーから、いずれも等距離に位置する価値自由的な学術体系である。本セッションはこの立場を生かすことで、時代により移り変わる精神障害者の社会的位置付けを描出するとともに、社会学から社会福祉学への現代的寄与の具体像を確認することを、合わせて企図するものである。

3. キーワード:精神障害、社会的構築、メディア、社会政策、対人援助職
4. 使用言語:日本語

【7】南アジアの社会運動――グローバルな価値観と草の根の力の接合点
1. コーディネーター:木村真希子(津田塾大学)
2. 趣旨:
 南アジア諸国では、社会運動が国全体の政治に影響を与える事例が少なくない。近年では、ネパールの民主化要求の高まりと王政の廃止、インドでは汚職撲滅運動が広い支持を集めたことがその好例である。こうした大規模な運動の他にも、グローバル化による大規模開発反対やカースト、エスニック集団の権利やジェンダー平等を求めた運動など、大小さまざまな運動が展開されており、実際に社会を変化させる重要な原動力となっている。
 これら社会運動は、人権や正義、環境、開発、貧困など、普遍的な価値観を手がかりにグローバルなネットワークを保ち、国際的なつながりを通じてさまざまな資金や訓練にアクセスしている。一方、開発反対運動やカースト集団、エスニック集団による運動は、特定の地域のコミュニティの利害が色濃く反映されており、支持者の生活と直結するため、草の根の支持の力も非常に強い。運動の指導者、参加者たちは個別具体的でローカルな要求をどのように普遍化させ、運動を展開しているのだろうか。そこではどのような運動手段が有効とされているのだろうか。
 本セッションでは、こうしたグローバルな価値観と草の根の力の接合点としての南アジアの社会運動の事例を分析し、同地域において社会運動が大きな影響力を持ち続けている要因を考察することを目指す。グローバルな価値観と草の根の力の接合とは、言い換えれば 1)普遍と特殊の接合と、2) グローバルとローカルの接合という 2 つの軸に置き換えることができるが、後者に関しては中間にナショナル、リージョナルなつながりが重要となることもあり、それらを議論の射程に入れることも歓迎される。
 なお、本セッションは南アジアを主な対象地域としているが、比較のために隣接する東南アジアや中央アジア、中東などを対象とした発表も歓迎する。

3. キーワード:社会運動、南アジア、グローバル、
草の根
4. 使用言語:日本語

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