第88回日本社会学会大会 テーマセッションの詳細

投稿日:2015年04月21日 カテゴリー:お知らせ  投稿者:学会事務局

【1】地方消滅から地方創生へ――日本賦活の条件
 ①コーディネーター:金子勇(神戸学院大学)
 ②趣旨:
 2014 年夏以降の「地方消滅論」とその批判である「地方再生・創生論」に国民の関心が高い。この50 年間の地域社会論では、アーバニズム、地域主義、地域開発、内発的発展、コミュニティ権力構造、住民運動、市民参加、コミュニティモデル、コミュニティモラール、一村一品運動、地域福祉、限界集落などが話題となったが、人口減少社会の到来で地方や地域が「消滅」をめぐり盛んに論じられている。
 「地方消滅論」の特徴は、①人口減少社会が背景にあり、②人口の社会増減と自然増減を基にした出産年齢女性の減少予測が消滅論の根拠に使われ、③地方消滅が具体的な自治体名で語られ、④少子化対策論は平凡であり、⑤小家族化への言及がなく、⑥地方消滅への対策に「選択と集中」パラダイムが使われ、⑦「極点社会」としての東京一極集中の緩和に、三全総以来の伝統的な地方中枢拠点都市の強化が主張されたことなどである。
 この「消滅論」批判としての「地方再生・創生論」では、①個別的で創生的な地域活動事例が対置され、②多様性の共生や自治が強調され、③農山村の集落の「強靭性」が主張され、④里帰り、盆や正月前後の帰省が重視され、⑤日常的行き来など別居する子ども夫婦の行動(ウィークエンドファーマーなど)への期待が大きく、⑥UJIターン者の活動に期待が込められ、⑦本格的な少子化対策論に乏しいことなどが共通に読み取れる。
 このテーマセッションでは、2014 年からの地方消滅・再生・創生三部作(増田寛也編『地方消滅』、山下祐介『地方消滅の罠』、小田切徳美『農山村は消滅しない』)を踏まえて、各自の調査方法と事例を活かしながら、少子化への判断を明示しつつ、日本社会の賦活に結び付き、汎用性に富む消滅・再生・創生に関わる地域社会論の展開を目的とする。個別経験主義を超えて、時空間が異なる多面的な事例研究の成果を普遍化するために、自己組織化システム論などの理論社会学との融合も視野に収めたい。
 ③キーワード:地方消滅、地方創生、コミュニティ、人口減少社会、少子化対策
 ④使用言語:日本語

【2】社会学とマンガ研究――笑い・ユーモア研究を接点に
 ①コーディネーター:茨木正治(東京情報大学)
 ②趣旨:
 本テーマセッションでは、「笑い」「ユーモア」を媒介として、マンガ研究と社会学研究の接点を見出すことを目的とする。「笑い」やユーモアの研究は、日本社会学会においてもあまり報告例がみられない。同じ事情はマンガ研究にもある。「笑い」やユーモアの社会における意義は経験的に語られている割には、研究には「慎重」である。この「慎重」さは、社会学やマンガ研究が対象とする社会・ひと・マンガが多様化した結果でもあるし、「笑い」やユーモアがもつ定義の複雑さと隣接領域の広さにあると思われる。マンガ研究においては、「笑い」自体がギャグマンガの範疇に含まれ、単なるマンガの構成要素の一つにすぎなくなったように見える。社会学においては、「笑い」の生理的なメカニズムや対人関係・小集団の「笑い」は社会心理学や心理学の領域とみなされ、質的研究でも人類学や民俗学の領域と考えられているように見える。
 しかしながら、「笑い」やユーモアによる排除や強制といった「負の機能」についてはあまり当該領域でも研究が進んでいない。また、前述した、社会心理学や心理学の実証(量的)研究でも個人や小集団に限られ組織や集団、地域や国家といったマクロ
レベルの研究には社会学が関与できる部分が多く存在する。マンガ研究においても上記の排除や強制・いじめといったテーマのマンガおよびその研究は存在するが、そこに扱われる「笑い」やユーモアの研究については、十分な研究が行われているとは言い難い。昨今のフランスの自称「諷刺」漫画雑誌とムスリムとの関係において、諷刺そのものについての議論が西欧(とくにフランス)とムスリム諸国でとでは乖離していることからみても、マンガと「笑い」・ユーモアの考察の立ち遅れの例としては十分であろう。
 本セッションでは、笑いとユーモアについて、「ユーモア」が「おかしさ、おもしろさを生む心的現象」、「笑い」を「ユーモア刺激によって生ずる諸表現」とするが、厳密な規定は求めない。報告者独自の規定が新たな議論と知見を生むことを期待する。
 ③キーワード:笑い、ユーモア、マンガ、社会学、メディア
 ④使用言語:日本語

【3】日本の開発経験から「開発社会学」を構築する
 ①コーディネーター:佐藤寛(アジア経済研究所)
 ②趣旨:
 近年アセアン諸国をはじめとして経済成長の著しい発展途上国の一部は「新興国」と呼ばれ、国際社会における存在感を高めており、これに伴ってそれぞれの国内での社会科学も充実しつつある。開発経済学では「中進国」と呼ばれることもあるこれらの国々は、しかしながらまだ「途上国」としての開発課題を抱えており、経済成長を通じた貧困削減のみならず、社会サービスの充実、民主的な政治制度の確立、さらにはWTO などのグローバルな自由貿易体制に参加するための「市場開放」など、かつて日本が経験した「開発過程」をさらに圧縮した短期間で遂行しなければならない、という課題に直面している。こうした中で、これらの地域の社会学者らは「開発社会学」と呼ぶべき研究領域を開拓しつつある。この「開発社会学」は、日本の社会学領域においては明治以降「農村社会学」「都市社会学」「社会開発論」などとして展開したものときわめて近似した問題意識に基づいている。
 今後日本の社会学者と、アジア諸国をはじめとした途上国の社会学者との研究交流の深化が期待される中で、わが国の開発経験と社会学研究の蓄積を整理することによって、日本の社会学が途上国の「開発社会学」に大きな貢献をすることが可能となると考えられる。
 そこで、本セッションでは日本の明治期以降の開発経験を「開発社会学」の視点から整理する論考を募集し、日本の「開発社会学」の輪郭を明らかにすることを目的とする。報告募集に当たっての基本的なスタンスは、わが国の貧困削減、農村開発、都市計画その他の地域開発、あるいは政治、経済、社会制度整備(開発)の事例を基点にしつつ、それが今日の途上国の開発状況とどのような異同があり、日本の経験が今日の途上国にどのような知見を付与できるか、という視点を求める。また、途上国の開発事象を研究対象としている場合は、その研究事例を基点におきつつ、それが日本のどのような開発経験と相関を持つのかについての分析を求める。研究として成熟したものでなくとも、日本の開発経験を「開発社会学」の視点で整理するうえでの独創的な着想を持つものも歓迎する。
 ③キーワード:開発・発展、近代化、制度構築、農村開発、都市計画
 ④使用言語:日本語

【4】経済倫理の社会学
 ①コーディネーター:橋本努(北海道大学)
 ②趣旨:
 格差社会、新自由主義、男女共働き社会、非正規雇用労働などの近年の経済社会問題をめぐるセッションである。かかる問題は社会学の問題であると同時に規範理論や倫理の問題でもあり、例えばマイケル・サンデルに代表される「白熱講義」シリーズは、それ自体が一つの社会的現象となって、社会問題の問題化に貢献してきた。社会現象とそれがはらむ倫理問題を論じる方法および議論のスタイルは、民主社会のための資源としてますます求められるようになっている。サンデル自身は政治哲学を専門とするが、中身はすぐれて社会学的であり、例えば著作『それをお金で買いますか』は、非経済的行為に貨幣関係を介在させた場合の問題点を掘り下げている。従来、貨幣関係は疎外関係であり望ましくないとされてきたが、その是非が争われる現代社会においては、価値観点を含めて事態を社会学的に再構成することが求められる。その場合の社会理論とは、たんなる批判理論ではなく、競合する諸規範を議論するツールでなければならない。
 理論的にみて、一つにはフーコーが福祉国家の批判者として受容された後に新自由主義の批判者として担がれたものの、ではいずれでもない権力の理想体制はどのようなものかという根本問題がある。また具体的に、例えば男女共働き社会の規範構想において、男性は育児休暇をとる「権利」があるのか「義務」を負うのかという問題がある。この他にも、ケア労働はだれがどのように負担すべきなのか、非正規雇用者をどのように減らすことができるのか、格差社会を克服する個々の政策はどこまで実効的なのか、等々、実態把握と政策の実効性・正統性をめぐる議論の重要性は増している。こうした倫理と実態を往復する研究の方向性について議論する場として、本セッションを提案したい。実態分析、規範分析の両方を歓迎したい。
 ③キーワード:格差社会、貨幣、倫理、ケア(配慮)、労働
 ④使用言語:日本語

【5】社会学における進化論的アプローチの可能性
 ①コーディネーター:桜井芳生(鹿児島大学)
 ②趣旨:
 「社会学の危機」をめぐる論調のなかで、無視できない論点は、コスミデス・トゥービーによる、「標準的社会科学モデル(SSSM)」批判の議論とおもわれる。社会科学においても進化生物学的な視点が不可欠であるという主張を体系的かつ精力的におこなったのは、The Adapted Mind (1992) に収録された彼(女) らの“The Psychological Foundations of Culture” であった(Google Scholar による引用回数2664)。このなかで、彼(女)らは生物学的人間認識を基盤とし、自然科学と社会科学とをつなぐ試みを提唱した。
 1990 年代以降、自然科学か社会科学かという2分法は、大きく揺らぎ始めている。というのも、進化心理学や社会神経科学、行動遺伝学など、自然科学的な手法にもとづく人間行動や人間社会の研究が急速に発展し、大きな成功を収めてきたからである。そして、それに伴って、政治学、経済学、人類学、心理学、教育学、言語学などの既存の研究領域でも、進化論をベースとした大規模な地殻変動が生じている。
 
これらの新しい進化論的アプローチの躍進は、脳イメージングやゲノム解読、コンピュータ・シュミレーションなどの技術的向上だけによるものではない。生物学的なるものと社会科学的なるものとが交錯する広大な領域に眼を向け、人間行動や人間社会の複雑さや戦略性を解き明かそうとしている点でも、旧来の進化論的アプローチからは大きな転換が図られている。たとえば、心のモジュール性やマキャベリ的知能仮説、心の理論、認知的ニッチ、互恵的利他主義、進化ゲーム、文化・遺伝子共進化などのアイデアは、人間社会の複雑性に迫るうえで非常に魅力的であり、既成の人間観や社会観を大きく塗り替える可能性を秘めている。
 このテーマセッションでは、このような観点から、社会学における進化論的アプローチの可能性とその問題点について議論していくことにしたい。
 ③キーワード:進化、遺伝、文理融合、健康社会学、ブレインサイエンス
 ④主に日本語(英語の個別発表も可)

【5e】Possibilities of Evolutionary Approaches in Sociology
 (1) Coordinator: Yoshio SAKURAI (Kagoshima University)
 (2) Description:
 Cosmides and Tooby (1992) asserted that evolutionary approaches should be needed even insociology and social sciences (The Adapted Mind). In this book, they advocated that we, sociologists, should take the approaches based on the biological cognitions about human beings by which we can bridge between natural sciences and social sciences.
At the 1990s, the dichotomy, that is natural sciences or social sciences, began to totter. The evolutionary psychology, the social neuroscience, the behavioral genetics and etc. had success. They had investigated human behaviors and societies based on natural scientific approaches. It is said that the theories and findings of the evolutionary approaches have applications in many fields, including economics, environment, health, law, management, psychiatry, politics, and literature. They are trying to investigate the very large fields where the biological and the social scientific interact with each other. They are trying to investigate about the complexities or strategies in human behavior or human societies. It
seems that the evolutionary approaches have many possibilities to improve sociological researches and theories. In this session, I would like to have presentations and discussions about possibilities of evolutionary approaches in sociology.
 (3) Keywords: evolution, genetics, interdisciplinary approaches between social and natural sciences, health-sociology, brain-science.
 (4) Languages: Japanese or English

【6】食と農の社会学(パート2)
 ①コーディネーター:谷口吉光(秋田県立大学)
 ②趣旨:
 食と農は私たちの生命と社会の再生産を支える最も基本的な領域であるが、20 世紀から現在に続く近代化、産業化、工業化、グローバル化によって、その様相は大きく変化してきた。「食と農の社会学」は食と農をめぐる現代的諸現象に対し、社会学的視点や理論を活かして、批判的に研究しようとする研究領域である。
 日本の社会学において食と農の分野はこれまで農村社会学、環境社会学、地域社会学や科学技術社会学などに関心をもつ研究者によって研究されてきた。そこから、グローバル化とその対抗運動、農家と消費者との関係性、食と農の担い手、農的ライフスタイルや就農、ローカリティとその変容、地産地消と地域自給、農と環境、食の安全性、ジェンダー、アイデンティティ、科学技術とそのリスク、食と農の倫理など多くの重要な問題が提起されてきた。他方、アメリカや欧州では1980 年代から「農業・食料社会学」(Sociology of Agriculture and Food) という研究領域が形成され、国際社会学会の中に設けられた研究委員会(RC40)を中心に、国際的な研究蓄積や研究者のネットワーク形成が進められてきた。日本の「食と農の社会学」はこうした欧米の研究蓄積から多くのものを学んできたが、残念ながら未だに社会学の明確な研究領域として形成されるには至っていない。
 そこで、昨年、桝潟俊子・谷口吉光・立川雅司共編『食と農の社会学』(ミネルヴァ書房、2014 年)の出版などを契機としながら、「食と農の社会学」がもつ現代性とその課題を議論するために、立川雅司がコーディネーターとなって同名のテーマセッションを開催した。8 本の報告はいずれも現代的問題を独自の視点から照射したユニークで刺激的な報告で、知的興奮に満ちたセッションにすることができた。今回も食と農に関する新しい事例の報告、新たな視角や理論的分析からの問題提起、「食と農の社会学」の領域設定に関する考察など、多角的なアプローチによる食と農の問い直しの試みを歓迎する。
 ③キーワード:食と農の社会学、農業・食料社会学、グローバル化、対抗運動、領域設定
 ④使用言語:日本語と英語

【6e】Sociology of Food and Agriculture (Part 2)

 (1) Coordinator: Yoshimitsu TANIGUCHI (Akita Prefectural University)
 (2)Description:
 Farming and eating are the most essential human activities that support the reproduction of life and society, but the modernization, industrialization and globalization of the 20th century have affected profound changes on them. Sociology of food and agriculture is the sub-discipline of sociology focusing on the contemporary phenomena of farming and eating from the critical viewpoints. Food and agriculture has been studied in Japanese sociology by rural sociology, environmental sociology, regional sociology or science, technology and society research. There have emerged out of them various important research themes including globalization vs anti-globalization movements, relationship between
farmers and consumers, new farmers and rural lifestyles, locality and its transformation, local food systems, food safety, gender, identity and agro-food ethics. When we turn eyes to the US and Europe, we see the emergence of the sub-discipline called “Sociology of Agriculture and Food” in the 1980s, from which Japanese sociologists have learned a lot, but they have not established a clear research field yet. On the occasion of the publication of “Sociology of Food and Agriculture” , the first Japanese textbook of this field, edited by Toshiko Masugata, Masashi Tachikawa and Yoshimitsu Taniguchi, we proposed a thematic session with the same title in 2014. Masashi Tachikawa coordinated the session. Fortunately we had 8 papers, all of which provided unique and exciting research results, and we enjoyed a wonderful
discussion. We welcome attempts of multilateral reconsiderations of food and agriculture, including new case studies, theoretical investigations from new angles, and discussion of the domain setting of “Sociology of Food and Agriculture” .
 (3) Keywords: sociology of food and agriculture, sociology of agriculture and food, globalization, alternative movements, domain setting
 (4) Language: Japanese or English


 【7】〈男性の生きづらさ〉をめぐる社会学
 ①コーディネーター:田中俊之(武蔵大学)
 ②趣旨:
 近年、様々な場面で、男性に関する議論を目にする機会が増えている。NHK の『クローズアップ現代』(2014 年7月31日)で放送された「男はつらいよ2014―1000人“心の声”」、あるいは、『AERA』(2014年9月1日号)の特集「男がつらい」のように、とりわけ男性の「生きづらさ」に対する関心が高い。また、政治的な側面に目を向けると、2010 年に策定された第3 次男女共同参画基本計画には、「男性、子どもにとっての男女共同参画」が重点分野として新設された。これをきっかけに、各自治体で男女共同参画についての計画を立てられる際には、男性に関する項目や行動目標が入るようになった。
 『平成26 年度版 男女共同参画白書』では、同白書で初めて男性に関する特集を組んだ。同特集に記された一文からは、確かに現代日本社会を生きる男性たちが苦しい立場に置かれていることが読み取れる。「男性は、建設業や製造業等の従来の主力産業を中心に就業者が減少し、平均所定内給与額も減少しているが、労働力率では世界最高水準となっている」。平たく言い換えれば、これまで多くの男性が雇用されてきた職場は失われつつあり、給与も減る一方であるが、それでもほとんどすべての男性は働き続けているということになる。
 ジェンダーの問題が女性だけではなく、男性との関連で論じられるようになったことは、基本的には歓迎すべき事態である。しかし、現状の男性の「生きづらさ」をめぐる議論では、男性というカテゴリーの内部における多様性はほとんど論じられていないし、ジェンダーの非対称性についての目配りが欠けているという点にも懸念がある。こうした点もふまえて、なぜ男性の「生きづらさ」が「社会問題」として前景化してきているのか、そして、この論点に光が当たることで何が退いてしまっているのかを考えていきたい。
 ③ キーワード: 男性学、女性学、masculinities、生きづらさ
 ④使用言語:日本語

【8】社会学における概念・理論・方法の移植(transplant)
 ①コーディネーター:飯島祐介(東海大学)
 ②趣旨:
 日本の社会学は、ドイツ・フランス・アメリカをはじめとする諸外国の概念・理論・方法を受容することで、言わば「輸入学問」として展開してきた部分が少なくない。このことは、日本の社会学の特性として、これまで繰り返し注目されてきた。そして、近年、日本の社会学がグローバル化の趨勢にのみこまれるなかで、あらためて強く意識されるようになっている。
 ここで、日本の社会学のひとつの特性を「輸入学問」として前提し、そこに内包された可能性と限界をただちに検討することも、たしかに可能であろう。たとえば、一方で、オリジナリティの欠如や日本社会の現実からの乖離を問題とすることができるかもしれない。他方で、さまざまな文化的・社会的背景をもつ理論研究の結節点となることへの期待を主張することができるかもしれない。
 しかし、一般的に広く社会学史を省みるならば、概念・理論・方法が国や時代をこえて移植(transplant)されること自体は、むしろ通常のことであった。日本の社会学における諸外国の概念・理論・方法の受容も、まずはこの一般的な現象のひとつとして位置づけることが可能であろう。そのうえで、あらためてその特性を、さらにそこに内包された可能性と限界を、検討することができるだろう。日本の社会学の特性を「輸入学問」とする自己理解それ自体が、日本の社会学の特性であるのかもしれない。
 そこで、本セッションでは、あえていったん日本の文脈を括弧に括って、一般的に、社会学における概念・理論・方法の移植という現象に関して、広く議論することにしたい。そのために、日本を含む、さまざまな移植の事例について、報告を募りたい。移植された概念・理論・方法は定着しさらに独自の展開を遂げることもあるし、定着することなく枯死することもあるだろう。これらの相違は、どのような条件の相違に由来するのか。こうした比較を視野に置いた報告も歓迎したい。
 ③キーワード: 移植(transplant) 概念・理論・方法 「輸入学問」 グローバル化
 ④使用言語:日本語

【9】「世界へのメッセージ」を深める――日本の社会学・社会福祉学から世界に向けて発信するべきこと

 ①コーディネーター:庄司興吉(東京大学名誉教授)
 ②趣旨:
 2014 年横浜でおこなわれた世界社会学会議に向けて、「世界へのメッセージ」が出された
(http://
www.socconso.com/English/index.html)。
 日本の社会学・社会福祉学系諸学会からのメッセージで、それぞれ学会の成立過程、活動経過、議論されてきたこと、3.11 への対応などを述べたうえで世界へのメッセージを発している。これをもとに世界の社会学者、社会福祉研究者との交流が始まっている。そのなかで、異なった学会あるいは専門分野に属する日本の社会学者・社会福祉研究者が、たがいに情報を交換しあい、日本から世界に向けて発信すべきことについて議論して、世界へのメッセージの内容を深め、国内の諸学会を初め、世界各地でおこなわれる学会、さらには2016 年社会学フォーラム(ウィーン)、2018 年世界社会学会議(トロント)などに積極的に参加していくことが期待されている。
 「世界へのメッセージ」では、社会学・社会福祉学系諸学会の状況や主張がそれぞれかなり詳しく述べられているが、英語で書かれているので、日本の社会学者・社会福祉研究者に必ずしも広く読まれていない面がある。そこで、その日本語版に相当するものをつくるべきだという意見があり、その可能性が模索されている。このテーマセッションでは、そうした動きをふまえて、日本の社会学者・社会福祉研究者がそれぞれ個人あるいは集団として、世界に向けて発信すべきことを出し合い、その内容と発信の仕方について議論していく。テーマは特定の分野に限定せず、日本と世界のあらゆる問題について、いろいろな視角からさまざまな方法で論じていく。実証研究でも学説研究でも新たな理論展開でも、日本での研究をふまえて世界に発信していくという、世界へのメッセージとしての基本線が貫かれていれば良い。いろいろな発表とそれらをめぐるさまざまな議論をつうじて、現代日本の社会学・社会福祉学の到達水準を明らかにし、日本から世界に送るべきメッセージの内容を深めていくことが目的である。議論は、意を尽くすため、まず日本語でおこないたい。
 ③キーワード:世界へのメッセージ、3.11 以前・以後の日本と世界、実証・学説・理論の媒介、日本社会学の世界への貢献
 ④使用言語:日本語


【10】幸福への社会学アプローチ

 ①コーディネーター:小林盾(成蹊大学)
 ②趣旨:
 このテーマセッションでは、人類の幸福に社会学がどう貢献できるのかを、多角的に検討する。アリストテレスは、幸福(エウダイモニア)こそが、人間の追求するべき最高の徳(アレテー)であるとした。ベンサムは、「最大多数の最大幸福」を社会が実現するべきだと考えた。では、人びとは実際どのくらい幸せになったのだろうか。日本社会では高度経済成長期以来、おおむね6~9割の人が「自分は幸福だ」と考えてきた。ところが、「金銭的な豊かさが、かならずしも幸せを保障しない」ことも指摘されている(幸福のパラドクスまたはイースタリン・パラドクス)。
 それでは、幸福研究はどう展開してきたのだろうか。幸福は、よりひろくウェル・ビーイング(善き生)として概念化された。それを経済学者は個人レベルの「効用」と、集合レベルの「社会的厚生」に分解し、両者がどのように関連するのかを分析してきた。心理学者は、ウェル・ビーイングを主観的および客観的に測定し、規定要因を求めてきた(たとえば「ビッグ・セブン」)。ただし、多くの知見が蓄積される一方、現代ではともすれば全体像を俯瞰することが難しくなっているかもしれない。こうした状況の中、我われ社会学者はどのような形で幸福研究に貢献できるのだろうか。そのために、幸福にどのようにアプローチするべきなのだろ
うか。
 そこで、これまでの社会学の遺産を整理したうえで、今後にむけて研究のフロンティアを拡大することをめざしたい。トピックには、たとえば以下のようなものがありうるだろう。
・理論的アプローチ:幸福の概念化、幸福研究の目的、幸福観の変遷など
・方法的アプローチ:幸福の測定、幸福と満足の異同など
・実証的アプローチ:事例分析、計量分析、国際比較など
 もちろんトピックはこれらに限定されない。多様な視点からのアプローチを期待している。
 ③キーワード:幸福、幸福のパラドクス、ウェル・ビーイング
 ④使用言語:日本語または英語

【10e】Sociological Approaches to Happiness

 (1) Coordinator: Jun KOBAYASHI (Seikei University)
 (2) Description:
 This session investigates how sociology contributes to the study of happiness. Aristotle regarded happiness (eudaimonia) as the highest virtue (arete) of human kind. Bentham argued that a society should pursue “the
greatest happiness of the greatest number.” Then, how have we become happy after all? In Japan, about 60 to 90% people think that they are happy since the rapid economic growth in the 1960’s. Yet it has been pointed out that monetary growth does not imply happiness (called the paradox of happiness or Easterlin paradox). What has been known in the study of happiness?
 Happiness was conceptualized as well-being in wider senses. Economists decomposed it to individual “utility”
and collective “welfare” to clarify their relationships. Psychologists measured it both in subjective and objective ways to depict its determinants (such as the “big seven” ). Still, it may be rather hard to draw the whole picture of happiness.
 Therefore, we first collect heritages in sociology so far. Then, try to widen frontiers. Topics may include (but are not limited to):
-Theoretical approaches (such as concepts, aims, history)
-Methodological approaches (measurement, happiness and satisfaction)
-Empirical approaches (case study, survey analysis, comparative study)
 (3) Keywords: happiness, paradox of happiness, well-being
 (4) Language: Japanese or English

【11】空間の接触領域を再考する
 ①コーディネーター:内海博文(追手門学院大学)
 ②趣旨:
 グローバリゼーションやトランスナショナルといったキーワードをもつ研究の興隆が表しているのは、現代社会の高度な移動性だけではない。それは、これまで別々の(物理的、制度的)空間にあると考えられてきた対象が、同一の空間において接触する
ようになってきたことも示唆している。移民や観光といった人の移動はそのわかりやすい例である。これら以外にも、それぞれ固有の空間性のなかに埋め込まれたモノや技術、資本や情報、思想や文化等の移動にともなって、無数の接触領域が拡がりつつある。A. アパドゥライの「スケープ」やM. プラットの「コンタクトゾーン」概念に喚起された諸研究が示すように、異なる空間どうしが接触する領域の増加という、いわば古くて新しい問題が現れつつある。この問題の出現により、社会学は次のことを迫られている。すなわち、空間的な切り分けに即して分けて考えるのが適切と考えられていた対象を、組み合わせて考えてみるという課題である。労働・福祉・地域・観光・科学・経済・文化・政治・知識の社会学といった具合に、空間的な切り分けに即した理論的切り分けにこだわる限り、現代における空間の接触領域という現象は理解しがたい。空間の接触領域は、専門諸領域の成果を結びつけることで生まれる事象の創発的な理解や、専門領域を横断することで発見される領域横断的な類比的把握といった、従来の連字符社会学に収まらない新しい社会学の可能性を開きつつある。
 本セッションでは、空間の接触領域に関してどのようなアプローチが可能かというテーマについて、報告者それぞれの取り組んでいる事例を通じて考えてみたい。異なる研究分野を横断的に接続する創発的なアイディアを歓迎する。
 ③キーワード:空間、グローバリゼーション、接触領域、異分野の接合
 ④使用言語:原則として日本語


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