『大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 社会学分野』ご活用および活用事例ご報告のお願い

投稿日:2015年08月20日 カテゴリー:学会内委員会 タグ:社会学教育委員会 投稿者:社会学教育委員会

『参照基準』は「たたき台」:教育現場の多様性をつなぐ
ご活用および活用事例ご報告のお願い
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社会学教育委員会委員長 笹谷春美
担当委員 大國充彦
ご意見等の送付先(学会事務局:jss@sociology.gr.jp

 
『大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 社会学分野』(http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-h140930-5.pdf、以下『参照基準』と記します)は、「日本学術会議社会学委員会社会学分野の参照基準検討分科会」において審議され、その結果を取りまとめて2014年9月30日に公開されたものです。パブリックコメントを寄せてくださった会員の方々、公開シンポジウムで貴重なご意見を頂いた皆さま方には、この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

 さてこの度は、『参照基準』の策定に関わった日本社会学会社会学教育委員会から、社会学教育に携わる皆さま方にお願いがあります。それは次の2点です。1つは、『参照基準』を読んで頂き、積極的にご活用いただきたいということ、2つ目には、その活用事例をお知らせいただきたいということです。その理由は以下の通りです。

 社会学教育に携わる人なら誰でも、社会学という学問の視座が学生に与えるインパクトの大きさを経験したことがあると思います。他方で、その魅力を伝える難しさを感じたこともあるのではないでしょうか。今日、社会学教育の現場の多様化・学生の質の多様化、それらを通して社会学教育の担い手の個別化・孤立化が進んでいます。

 学部や学科として社会学を専門的に学ぼうとする学生を対象とするのか、あるいは学部や学科がなく一般共通科目として(あるいは「社会学」という名を冠していない科目のなかで)学ぶ学生を対象とするのかによって、その難しさは異なるでしょう。また、社会学を学ぶ学生の質も多様化しています。それは単に学生の学力や学修意欲の差だけではなく、都市部と地方などの地域的な違いや経済的な格差の問題を背景として、学生の日頃の生活環境や関心も多様化しています。

 社会学教育の担い手は、学生たちに、社会学を学ぶことを通じて、現代社会と自らの立ち位置の構造を客観的に認識し、問題解決の方向性を思考する洞察力を身につけてほしいと考えています。そのため、教育現場の状況に応じて内容と方法に工夫を凝らし、学生に相対しています。しかし、社会学を通して学生に何を教えたいのか、どのようなことを伝えられるのかについては、個々にまかされているのが現状ではないでしょうか。また、その理解は個別的にならざるを得ず、共有化は必ずしも進んではいません。多種多様な科目を担当しなければならない場所においては、社会学の取り扱う対象が広範で汎用性が高いという特色が、むしろ「社会に関わることならなんでもやれるが、よくわからない学問」という評価を受けることもあり、社会学の専門家として教育に悩みを抱えている教員が多いことは容易に想像されます。

 『参照基準』は、第一に、こうした社会学教育がかかえている多様な課題を反省的に捉え直し、第二に、それぞれの現場で格闘している社会学教育の理解や工夫、悩みを共有し、そして第三に、実りのある社会学教育の在り方に向けた議論の場を作るための「たたき台」になると考えています。

 『参照基準』策定の経緯を見れば、この基準がいわば「上から押しつけられた標準化」と受け取られる可能性が高いことは確かです。けれども、私どもは、たとえきっかけが外発的なものであったとしても、これを好機と捉え、リフレクシブな形で社会学教育の豊穣化に役立てようと考え『参照基準』を策定して参りました。『参照基準』は「厳格に準拠すべき基準」や「機械的に適用されるべき基準」ではなく、社会学教育の内容を統制しようとすることを意図するものでもありません。そうではなく、『参照基準』をたたき台として活用しながら、社会学教育に関する共通の言語を生み出し、社会学教育に携わる方々の間に共通の土俵を設定することを通して社会学教育の困難と可能性を明確にすることができればと考えます。『参照基準』の鮮度が落ちれば新しいものに更新することは当然です。

 皆さま方には、上記の『参照基準』の作成意図をご理解いただき、社会学教育をより豊かなものにするために積極的に活用していただくとともに、『参照基準』を現状に即したより適切な内容に発展させるために、『参照基準』を活用された事例を、社会学会社会学教育委員会までお寄せいただけますようお願いします。『参照基準』を用いるプロセスで、感じられたこと、生じたさまざまな出来事や問題・疑問、学生たちの反応や手ごたえの有無、活用後の評価などをぜひ率直にお聞かせください。

 お寄せいただいた事例の論点を整理し、社会学教育に携わる皆さま方と共有し、次の議論につなげたいと思っております。