第89回日本社会学会大会 研究活動委員会企画テーマセッションの詳細

投稿日:2016年04月28日 カテゴリー:お知らせ  投稿者:学会事務局

【1】「移民第二世代」への社会学的アプローチ
 ①コーディネーター:樋口直人(徳島大学)
 ②趣旨:
 1965年に米移民法が改正されて以降、ラテンアメリカやアジアからの移民が急速に増加した。それから30年を経過した96年には、アメリカ社会学会長だったポルテスが編集したThe New Second Generationが刊行された。第二世代といっても、その親の世代は専門職、企業家、労働者、難民と多様な背景を持っており、それが集団ごとの分岐を生み出している。そのような問題意識のもとで、第二世代の状況にアプローチする研究が米国だけでなく西欧でも急増した。
日本では、難民条約批准から約35年、1990年の新入管法から四半世紀が過ぎており、類似した問題意識にもとづく研究がなされてもよいだけの時間が経過している。実際、外国生まれ日本育ちの1.5世、両親のどちらかが日本人であるダブルも含めれば、かなりの数の第二世代が一定年齢に達している。これまで、「外国にルーツを持つ子ども」というと、言語や教育、アイデンティティに重きをおいた研究が多かったが、それでは現実に追いつけない。労働、結婚、家族の再生産・再編成、祖国とのつながり(トランスナショナリズム)、非行や犯罪など、社会学的に解明されるべき課題が多様化している。
 このテーマセッションの目的は、こうした状況を明示的に社会学の研究テーマと位置付けることにある。これまでも、関連する研究が個別には行われてきたし、一定の蓄積も存在する。しかし、そうした研究を体系的に集め、教育をはじめとして多様化する「移民第二世代」という研究領域を明示的に掲げ、展開すべき時がきているのではないか。そのために、関連する研究者がまとまった研究成果を披露し、関心あるオーディエンスと一堂に会する機会とすることが、企画の目的となる。なお、コーディネーター自身は日本を研究していることもあり、企画に際しては日本の状況を念頭に置いているが、それと比較対象となる外国の事例に関する報告も歓迎する。
 ③キーワード:移民研究、社会移動、文化変容、在日外国人、segmented assimilation
 ④使用言語:日本語または英語

【2】「アクティビズムの復活」と社会運動論:応答の試み
 ①コーディネーター:西城戸誠(法政大学)
 ②趣旨:
 反安保法制、震災と反原発、排外主義運動とカウンター運動など、街頭での直接行動を伴う社会運動が、過去5年間で急速な盛り上がりを見せている。大きな書店では、「社会運動」というカテゴリーのコーナーが設けられるようになり、安保法制反対運動を中心とした本がよく売れている。これは、社会運動研究者としてみると、やや戸惑いさえ感じられる事態といえなくはない。日本の社会運動研究は、当時の日本の社会運動の興隆を受けた実証研究、理論研究が主流で、1940~50年代生まれの研究者が若いうちに手がけたテーマという性格がある。その後は社会運動の衰退とともに、都市、地域、家族、環境社会学などにおける一現象、一要素としての社会運動という扱いになっていったからである。
 社会運動研究の不振は、日本における社会運動の「弱さ」によるところが大きい。一般には、70年代で運動(学生運動、平和運動、住民運動)の季節は終わり、80年代は「冬の時代」となった。90年代以降は、NPO・ボランティアといった事業体まで含めて社会運動を論じるところまで、対決的な行動は減少していった。それゆえ、社会運動研究は対決型の社会運動からより穏健な運動や、「もはやかつてのような運動とはいえない」対象に焦点を当てることになった。
これは、社会運動が広く定着し、さまざまな過程に影響を及ぼすのが常態になるという、欧米の「社会運動社会」仮説とは相いれない現実だった。そうした研究潮流に対して、これまでの問題設定が無効化するのではないかという程度に、社会運動が頻発するようになった。それは、単に震災や原発事故といった要因では説明できない、多角的な分析を要請する事態といえる。
 このような状況に対して、社会運動研究はどのような発言が可能なのか。本テーマセッションは、学会シンポジウム「アクティビズムの再興?」とのタイアップ企画であり、特に社会運動研究からの応答に主眼をおいている。近年の社会運動に対する理論的・実証的な研究に限らず、これまでの社会運動研究の問題に対する知識社会学的な分析、運動の歴史的展開を踏まえた分析、国際比較の観点からの分析など、さまざまなアプローチからの報告を想定し、社会運動研究の理論、方法に対する再考も視野にいれた議論を展開してみたい。
 ③キーワード:社会運動論、アクティビズムの空間・担い手・連続性、運動と感情、グローバルな運動とローカルな運動
 ④使用言語:日本語

【3】農業・農村地域の社会解体的危機に抗する<住民の力>
 ①コーディネーター:西村雄郎(広島大学)
 ②趣旨:
 日本の地域社会は、1980年代に入って先進国型の同質的な単一の生産体系に基づく地域間産業部門分業を反映した「中心-半周辺-周辺」という統合構造に転換し、東京一極集中とその周辺に位置する地方(周辺地域)社会の「経済的衰退」をうみだしてきた。さらに、2012 年の社・人研の推計によれば、2010年に1.28 億人であった日本の人口は2040年までに約2100万人減少し、とりわけ地方圏は1310万人もの大幅な減少を予測しており、地方圏は社会解体的危機と呼ばざるをえない事態に直面しているといえる。
このなかで政府は「市町村大合併」や「自立定住圏構想」、「21世紀定住圏構想」などを提起し、産業や文化、医療、娯楽などの生活機能の「選択と集中」=「地域中心市」の都市機能強化による問題解決を志向している。しかし、これらの政策は、各圏域の地域特性を考慮することなく、政策立案に住民参加の機会を保障することないまま、「中心市」の機能強化を志向するものとなっており、機能主義的・新自由主義的な立場からの地域生活圏再編=周辺生活圏の切り捨て策という性格をもっている。
 そこで本セッションでは地方圏のなかでも最も大きな矛盾にさらされている農業・農村地域に焦点をあて、上記のような状況のなかで展開されている住民レベルの様々な営為とその社会的意味を明らかにすることによって、社会解体的危機に抗する<住民の力>と、そこから生まれる自律的な農業・農村地域のあり方について検討していきたいと思う。
報告を期待するのは、各地域の地域特性を背景とした社会解体的危機に抗する住民の営為(協業・協同)とその社会的意味を明らかにしようとする報告であり、具体的には、多様な農業経営のあり方をベースとした様々な住民の営為や、様々な地域課題を抱えた農村社会と外部社会との連携の中で展開されている住民の営為、農業・農村地域固有の課題解決にむけた住民の営為をふまえ、その社会的意味の解明をめざす研究の成果である。
 多くの会員からの報告応募を期待する。
 ③キーワード:地方社会、農業、農村社会、社会解体的危機、住民の力
 ④使用言語:日本語

【4】社会意識の計量社会学の現在
 ①コーディネーター:轟亮(金沢大学)
 ②趣旨:
 グローバル化と少子高齢化の進展、大震災と原発事故、政権交代等の変動を通して、近年の日本の社会意識の様態に変化が生じている。例えば、継続的な調査の結果では、性別役割分業意識にこれまでの平等志向の高まりとは逆向きの変化がみられ、若年世代の保守化と解釈された。また、若者の「幸福感」が経済状況とは逆あるいは独立に高まっているとの指摘がなされている。階層構造との関連で言えば、「学歴分断線」の顕著化が述べられたり、比較的新しい階層問題である、階層正規・非正規間の生活条件の格差と意識・心理の関連に注目がなされたりしている。このような新しい意識の動向に対して、近年も大小さまざまな社会意識調査プロジェクトが遂行されており、それらによって得られている知見を相互参照し、研究の到達状況を確認することで、変化し続ける社会意識への計量社会学を進めていくことができるだろう。
 一方で、日本の社会意識の計量研究はいくつかの方法上の課題・問題を抱えているように思われる。そのひとつは、社会調査の困難と呼ばれる種類のもので、端的に述べるならば回収率の低下とデータの質の問題である。このような課題に対して、混合研究法やデータの補正などの新しい方法が研究・実施されており、方法と方法論の成果を共有することは、特に現在、非常に有用であると思われる。ふたつめには、国際比較である。言語の制約から、社会意識の国際比較は、欧米等と比べて日本では活発ではない。また、例えば、幸福感について、国際的に日本人の幸福感の低さが問題となっている一方で、国内ではその高さ(高まり)が注目の焦点だという、国内外の関心のズレが存在するという奇妙な状況もある。学術的な国際化状況からも、国際比較研究の文脈を考慮した日本の社会意識研究の必要性が広く認識されるべき段階だと言える。
 以上のような論点に関わる報告によって、計量的な社会意識研究の現在とこれからについて考えてみたい。
 ③キーワード:社会意識、価値観、社会調査の方法、世代、国際比較
 ④使用言語:日本語

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