第90回日本社会学会大会 研究活動委員会企画テーマセッションの詳細

投稿日:2017年04月20日 カテゴリー:大会情報  投稿者:学会事務局

【1】移民受け入れを考える
 ①コーディネーター:樋口直人(徳島大学)
 ②趣旨:
 日本では、移民受け入れ論が下火のまま推移する一方で、きわめて問題の多い技能実習制度が拡大を続け、実質的な移民受け入れの制度となっている。だが、小手先の労働力確保では到底対応できない人口減・労働力不足とそれに伴う移民受け入れが、「人口学的運命」として遠からず現実の課題となるだろう。そこでこのテーマセッションでは、すべての学問領域のなかでもっとも移民研究者の層が厚い社会学の立場から、移民受け入れを考える際に必要な論点を提示して議論を行いたい。
 振り返ってみれば、1980 年代後半の外国人労働者受け入れ論争、2000 年前後の補充移民に関わる受け入れ論争があったが、常識的にわかる程度の論点しか提示されてこなかった。議論が低調だった原因の1 つは、主張を裏付けるような素材が乏しいまま、単なる予測のもとで空中戦が展開され、論点が深まらなかったことにあるだろう。
 しかし、いわゆるニューカマー外国人が増加して30 年が経過した現在、移民受け入れに関わる議論に十分たえうる現実・研究の蓄積がある。中国やフィリピン、南米出身の日系人、結婚移民、非正規滞在者、研修生・技能実習生、留学生、専門職移民、第二世代——こうした移民はいかなる様式で受け入れられ、現在に至る軌跡をたどってきたのか。労働や教育での排除、ジェンダー化された包摂、ブローカーを介した移住、起業による上昇移動、排外主義の跋扈といった日本の現実の分析から、移民受け入れを論じるに際して基本となる知見や論点を提示できる。
 なお、コーディネーター自身は日本を研究していることもあり、企画に際しては日本の状況を念頭に置いているが、比較対象となる外国の事例に関する報告も有益だと考える。また移民受け入れというと、とかく労働力の問題と捉えられがちだが、社会学的に広く文脈を設定することも、テーマセッションのねらいの1 つである。すなわち、政策、労働、家族、教育、ジェンダー、エスニック・ビジネス、宗教、言語、犯罪、ネットワーク、都市・地域、人口、歴史、差別、社会的排除などを専門とする研究者の報告を募り、幅広く問題を考える機会としたい。移民受け入れなどという語り口自体がエスノセントリックである、といった前提を問い直す報告も大いに歓迎する。
 ③使用言語:日本語または英語

【2】学際性、もしくは当事者との協働における質的研究
 ①コーディネーター:伊藤智樹(富山大学)
 ②趣旨:
 このセッションは、シンポジウム「社会学の中の質的研究、社会の中の質的研究」の連動企画である。ここ10 〜20 年ほど前と比べると、質的調査を用いた研究成果の厚みは増し、その当時「調査法のテキストはたくさん出てきたけど、良質な経験的研究は限られるよね」と言われていた状況ではなくなってきたように感じる。その分、社会学以外の学問分野をする人との接点や対話、あるいはいわゆる当事者の知的関心や期待などに応えなければならない機会と経験も、多くなってきているのではないかと考えられる。それらに対して、あまりマニアックな言葉を振り回すと敬遠されるかもしれないし、逆にそれらをすべて脱色してしまうと、今度は研究の独自性を見失う危険がある。そのようなとき、いかに「社会学」らしさを自己認識し、打ち出すべきなのか。そうした問題に関する情報や意見を積極的に交換して、質的研究の実質的水準の確保と、対外的なプレゼンテーション能力の向上を図るべき時代に入ってきているのではないだろうか。
 シンポジウムは、分析——ここでは、一定の理論ないし方法論のもとで「データ」とみなしうる素材からアウトプットとなる知見を産出する行為・プロセスを指す——に照準する。したがって、このセッションでは、特定の分析方法に限定はしないが、報告者が何らかの特徴的な理論枠組みや手続きにもとづいてデータから成果物を導き出していると自認していることを条件としたい。シンポジウムの基本的な問いである「その方法だからこそ明らかにできるものは何か」「フィールド、社会学以外の専門家、あるいは社会に対して、自分の研究の意義や価値をどのように説明するか」のいずれか、あるいは両方によって、自らの質的研究を見つめ直してみたいと考える諸氏の参加をお待ちしています。
 ③使用言語:日本語

【3】「概念分析の社会学」の展開
 ①コーディネーター:小宮友根(東北学院大学)
 ②趣旨:
 このセッションは、シンポジウム「社会学の中の質的研究、社会の中の質的研究」の連動企画である。シンポジウムで取り上げる予定の研究法のひとつに「概念分析の社会学」がある。ここでいう「概念分析」とは、いわゆるヴィトゲンシュタイン派エスノメソドロジーの研究方法論を定式化する表現であり、近年日本では中堅から若手の研究者による研究書、論文集、教科書、翻訳書などが相次いで出版され、一定の広がりを見せている。その特徴のひとつは、資料タイプに依存しない一貫した分析の視座によって、他の研究法とのより広い比較検討、接点の模索に開かれているという点にあると言えるだろう。このセッションでは、「概念分析の社会学」にかかわる研究報告をとおしてその定式化について検討することで、シンポジウムの議論をより実りあるものとするための認識共有と論点析出の場としたい。
 「概念分析」と言う以上、焦点をあてたいのは、分析の仕方と、その結果あきらかになる知見の関係である。実のところ、「質的」研究という括りは、個々の研究がデータをどう分析し、何をあきらかにしているのかを考えるためにはまったく役に立たない。ひとくちに「質的研究」といっても、対象となるデータは公文書や歴史資料などのテクスト、広告や写真などの画像、ラジオ・テレビ番組あるいは研究者自身によって撮影された音声・映像記録などさまざまである(インタビューデータやフィールドノートはそうした多様な資料のひとつに過ぎない)。したがって、さまざまな社会的コンテクスト(行政、マスメディア、研究者による記録…)のもとで産出されるさまざまなタイプの資料(文書、音声、映像…)を前に、そこから何をどうやって知ることができるのかについての体系的な考察がなければ、社会学における「質的」研究の意義は明確にならない。「量的」研究との関係を考察することなどなおさらである。この点、「概念分析の社会学」はかなり自覚的に研究を進めており、それゆえその立場を検討することは、「質的」研究の諸方法において「データ」「分析」といった事柄がいったい何を意味するのかについて、比較しながら考察するためのよいたたき台となるだろう。
 上述の理由から、さまざまなタイプの資料を用いた研究報告をとおして「概念分析の社会学」の方法論を明確にすることをテーマセッションのねらいとしたい。エスノメソドロジー/会話分析にとって伝統的な相互行為場面の音声・映像記録の分析だけでなく、文書資料や画像、インタビューデータやフィールドノートの概念分析研究も積極的に募りたい。もちろん経験的な研究だけでなく、概念分析について理論的・方法論的に検討する報告も大歓迎である。
 ③使用言語:日本語

【4】社会調査法研究の新しい展開
 ①コーディネーター:轟亮(金沢大学)
 ②趣旨:
 2001 年の日本社会学会シンポジウムでは社会調査の困難がテーマとされたが、その後、個人情報保護法の成立・施行(2003 年・2005 年)、個人情報漏洩事件の大量な報道(2005 年以降)、住民基本台帳法の改正(2006年)による閲覧制限、文部科学省による「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて」の提示(2006年)などがあり、さらに現在に至るまで、社会調査(サーベイ・リサーチ)の社会的環境は大きく変化している(イギリスやアメリカの投票結果の予測をめぐり、世論調査批判が起こったことも記憶に新しい)。実質的な研究テーマ(リサーチ・クエスチョン)の高度化の一方で、社会調査に対する一般市民や研究者の所属組織、資金提供機関の視線は厳しいものとなっており、低い回収率やクレームへの対応、制度的手続きの遵守、研究成果が「有用である」ことなど、研究者はさまざまな高いレベルの要求に直面する。いままで以上に、社会調査データの質を維持・向上させるため、調査法研究の必要性が高まっている。
 近年の社会調査の技術において最も大きな革新といえるのは、ICT の導入である。PC やインターネット、さらにはスマートフォンやタブレットPC の普及によって、コンピュータを実査に使用することが比較的容易になった。2015 年国勢調査におけるオンライン回答の導入は、今後の社会調査の手法がコンピュータ支援型にシフトすることを予想させる。この変化によって、調査法研究者は実査の過程に関する情報(パラデータ)を新しく入手し、調査法研究を展開していくことが可能となっている。
 以上のような状況を踏まえて、社会調査法研究の新しい論点や成果を報告することを通し、調査法研究のこれからの展開について考えてみたい。募集するテーマは幅広く、とりあえずの例示として、パラデータ分析と実査の過程の改善、訪問面接調査員のトレーニングやインストラクションと実査管理、名簿を使用しないサンプリング方法、インターネット調査の学術的利用、コンピュータ支援型調査(CAI)のミクストモード的な展開、欠測データの補訂、社会調査による研究成果発表と科学コミュニケーションなどを挙げるが、これにとどまらない新しい発想の研究報告を期待している。
 ③使用言語:日本語

【5】モノと人の社会学
 ①コーディネーター:立石裕二(関西学院大学)
 ②趣旨:
 20 〜30 年前と今を比べたとき、一番変わったのは何か? 社会学者の答えは人ぞれぞれだろうが、一般の人に尋ねれば、まずはモノの面での変化が思い浮かぶのではないか。モノの変化による影響は、私たちの生活の隅々まで及んでいる。たとえば出産や育児といえば、あまり「ハイテク」ではない分野にも思えるが、一世代前と今を比べれば様変わりしているし、そうした変化を生んでいるのは、何よりもモノの面でのイノベーションである(子守アプリ、育児ブログなど)。家庭における「三種の神器」、職場におけるOA 機器、友人関係における携帯電話…。時代による「変化」を考えるとき、モノのもつインパクトはきわめて大きい。
 にもかかわらず、これまでの社会学では、モノの変化は文化的な表象として、あるいは社会構造的な変化の一つの帰結としてのみ扱われることが多かった。モノの変化について言及される場合でも、その理論的な位置づけまで踏み込んだ検討はなされてこなかったと思われる。しかし、モノ(non-humans)、すなわち人間以外の、大小さまざまな人工物や自然物が果たす役割を正面から論じない限り、社会の変化という現象を正面から捉えたことにならないのではないか。
 モノ・人・社会がともに変化していく現象を捉える理論的枠組みとして、一つの手がかりとなりうるのが、フランスの科学社会学者ラトゥールらが提唱してきた「アクターネットワーク理論」である。モノ(自然)と切断された近代的な「人間」「社会」観を批判し、モノと人間が同格のアクター(アクタント)としてネットワークを形成していく過程を分析するべきだと主張する彼らの議論は、科学社会学の範囲を超えて、アーリやラッシュら、社会の流動的/生成的な側面に注目する社会学者たちに大きな影響を与えてきた。
 このセッションでは、ラトゥールらの議論を一つの手がかりとしつつ、しかしそれに限定することなく、モノと人間との相互作用、両者をともに巻き込んだ社会変化を捉えるための理論的視座を考えていきたい。学説史や社会理論からのアプローチに加えて、産業や労働、家族、医療、環境、メディアなどの分野の実証的研究をもとに、モノと人間の関係にせまる報告も歓迎します。多くの方の応募をお待ちしています。
 ③使用言語:日本語(英語での発表も可能です)

【6】ポスト世俗化時代における宗教と社会
 ①コーディネーター:安達智史(近畿大学)
 ②趣旨:
 近年、政治学の分野で、「ポスト世俗化」という考え方が注目されている。ポスト世俗化とは、近代の世俗化原理あるいはテーゼがリアリティを失った時代とともに、そのなかで世俗社会と宗教とが、討議や「翻訳」を通じて新たな形で相互に理解を深め、また啓蒙される可能性を示唆した概念である。
 だが、ポスト世俗化時代におけるそうした翻訳実践は、政治ないし公共領域に限定されるものではなく、個々の一般信徒の日々の生活のなかでその重要性を増してる。グローバリズムを通じたモビリティの高まりや情報化の進展により、人びとの宗教生活は、それを取り囲んでいた伝統的な社会的・文化的文脈から「脱埋め込み化」され、市場や市民社会といった世俗社会のそれへと「再埋め込み化」なされるようになっている。その結果、異なる領域間の翻訳や読み替えは、もはや一部の宗教的スポークスパーソンや政治的代弁者の手に負えるものではなくなり、日々の生活のなかで諸個人によって日々実践されなければならない事柄となっている。だが、そうした翻訳実践のあり方は、実際には一様なものではなく、宗教(or 宗派)、社会、ジェンダー、階層、個人によってさまざまである。また翻訳実践に活用される資源(ex. 宗教施設、知識、インターネット、シンボル、読み書き能力など)や戦術(ex. 交渉・妥協・再解釈)には、多様性が存在すると考えられる。
 本部会は、宗教的領域と世俗的領域を越境・接合するための資源や具体的な個人的・集団的戦術に着目することで、規範的・理想的言明を超え、ポスト世俗化時代における宗教と社会の平和的共存の現実へと接近することを目的としている。具体的には、以下のようなテーマが想定される。「宗教と社会における女性役割」「世俗社会とのインターフェイスとしての宗教的知識」「アイデンティティ構築における学習サークルの役割」「インターネットを通じた新たな信仰形態」「宗教・若者・表象」「改宗とアイデンティティ管理」「宗教理解をめぐる世代間格差」「宗教とシティズンシップ」「ポスト世俗化時代の社会理論の可能性」など。
 ③使用言語:日本語(英語での発表も歓迎します)

【7】原子力災害と社会学——「避難者の権利」と地域再生の可能性をめぐって
 ①コーディネーター:加藤眞義(福島大学) 
 ②趣旨:
 2011 年3 月11 日に起こった東京電力福島第一原子力発電所の事故は、依然として、地域社会や地域住民に、さまざまな深刻な被害や影響をもたらしている。
 東日本大震災にともなう避難者はなお12 万3000 人に及ぶ(復興庁調べ、2017 年2 月13 日現在)。そのうち約8 万人は、福島原発事故にともなう避難者である。福島県内に約4 万人、福島県外に約4 万人が避難している。6 年以上にわたって、これだけの数の住民が帰還できずにいるのは、近・現代の先進社会において類例を見ない。
 避難者は、避難指示による「強制避難者」と区域外避難者(いわゆる「自主避難者」)に大別されてきた。日本政府および福島県は、除染によって年間空間線量20 ミリ・シーベルト未満(基準値が福島事故前から20 倍に引き上げられた)の地域が拡がってきたとして避難指示を解除する早期帰還政策をとっており、2017年3 月末までに避難指示を解除される地域が少なくない。あわせて、多くの避難者、支援者の反対を押し切って、自主避難者に対する借り上げ住宅の無償提供が2017 年3 月末で打ち切られるほか、「強制避難者」の( 住宅補助なき)「自主避難者」化が予想される。避難生活の長期化、助成の打ち切りなどにともなって、避難者の不安・葛藤・苦悩、住民間・家族間の分断・亀裂はいよいよ深刻化しつつある。避難指示を解除された地域の「復興」「再生」も多くの困難に直面している。多くの住民が「戻りたいけれど、現状では戻れない」と苦悩し続ける中、早期帰還政策はどれだけリアリティを持ちうるのか。「仮の町」「二重住民票」など、早期帰還以外の選択はどのように可能か。地域再生の行方をどのように見いだすことができるのか。
 原子力災害による避難者の現状と課題を明らかにするうえで、地域再生の課題を究明するうえで、社会学はどのような貢献をなしうるのか。意欲的な報告を歓迎したい。
 ③使用言語:日本語

【8】公的統計を利用した二次分析——その展開と可能性を探る
 ①コーディネーター:香川めい(東京大学)
 ②趣旨:
 社会調査データの利用を取り巻く環境は大きく変化している。東京大学社会科学研究所のSSJ データアーカイブなどの複数のデータアーカイブの設置や整備が進んだことで、アーカイブからデータの提供を受け、二次分析を行いその結果を広く学術的成果として公表することは当たり前のこととなった。さらに、2009 年4 月(2007 年5 月改正)から施行された統計法では、公的統計の二次的利用の範囲が広がり、公表された統計表に掲載されたデータのみではなく、個々の研究者の関心やテーマに即して加工された情報を得ることや、一定の条件を満たせば、個票データにアクセスして分析することができるようになっている。
 しかし、少なくとも社会学分野において、データアーカイブを通じて提供されたデータの二次分析に比較すれば、公的統計の二次的利用が認知され、広く利用されているとは言い難い状況にある。経済学や公衆衛生の分野で「就業構造基本調査」、「国民生活基礎調査」等の公的統計を利用した研究が広がりつつあることを鑑みれば、社会学の分野においても公的統計の二次的利用から得られる知見は少なくない。例えば、公的統計のサンプルサイズは研究者が行う学術的な量的調査をはるかに凌ぐものであり、それまでであれば、該当ケースが少なすぎるために安定的な結果が得られなかった対象やより微細なカテゴリー間の違いを検証することができる。一方で、これは量的データの二次分析一般にあてはまることでもあるが、設問が限定、固定されているため、より詳細なメカニズムや自身のテーマや関心に十全に沿った検討ができるわけではないという制約もある。
 そこで、社会学における公的統計データの二次的利用の状況を整理し、公的統計の二次的利用によって何が得られるのかを考えたい。どのような問いやテーマであれば、公的統計のメリットを活かせるのか、逆に二次的利用によっては決して明らかにできない問いやテーマは何か、公的統計の二次的利用の分析事例の報告を募り、共有することで理解を深め、展開を探る機会としたい。どのような形であれ、公的統計を二次的に利用した実証分析の報告を広く歓迎する。
 ③使用言語:日本語

【9】農業・農村地域の社会解体的危機に抗する<住民の力>
 ①コーディネーター:西村雄郎(広島大学)
 ②趣旨:
 日本の地域社会は、1980 年代に入って地域間産業部門分業を反映した「中心−半周辺−周辺」という統合構造に転換し、東京一極集中がすすむ中で地方(周辺地域)社会の「経済的衰退」が生じている。その中で、社・人研は2010 年1.28 億人の人口が2040 年には約2100 万人減少し、とりわけ地方圏は1310 万人もの大幅な
減少すると予測しており、地方圏は社会解体的危機と呼ばざるをえない事態に直面している。
 このなかで政府は「市町村大合併」や「自立定住圏構想」、「21 世紀定住圏構想」などを提起し、産業や文化、医療、娯楽などの生活機能の「選択と集中」=「地域中心市」の都市機能強化による問題解決を志向している。しかし、これらの政策は、各圏域の地域特性を考慮することや、政策立案に住民参加の機会を保障することがないまま、「中心市」の機能強化を志向するものとなっており、機能主義的・新自由主義的な立場からの地域生活圏再編=周辺生活圏の切り捨て策という性格をもっている。
 そこで、本セッションでは地方圏のなかでも最も大きな矛盾にさらされている農業・農村地域に焦点をあて、上記のような状況のなかで展開されている住民レベルの様々な営為とその社会的意味を明らかにすることによって、社会解体的危機に抗する<住民の力>と、そこから生まれる自律的な農業・農村地域のあり方について検討していきたいと思う。
 同じテーマで設定した昨年のテーマセッションでは、中山間地域における集落を基盤とした農業実践、農協を核とした地域づくり、I ターン者をターゲットとした定住促進策の展開、地域圏域を基盤とした新たな農業の展開などに関する報告がなされた。
 本年のセッションでも昨年と同様に、各地域の地域特性を背景とした社会解体的危機に抗する住民の営為(協業・協同)とその社会的意味を明らかにしようとする報告を求める。より具体的には、多様な農業経営のあり方をベースとした様々な住民の営為や、様々な地域課題を抱えた農村社会と外部社会との連携の中で展開されている住民の営為、農業・農村地域固有の課題解決にむけた住民の営為の実態と、その社会的意味の解明をめざす研究成果の報告であり、これらの報告を受けて農業・農村地域の社会解体的危機に抗する<住民の力>の意味について議論していきたい。
 多くの会員からの報告応募を期待する。
 ③使用言語:日本語