『社会学評論スタイルガイド』

第2版刊行のことば

 日本社会学会が旧版の『スタイルガイド』を刊行したのは,1999年9月のことであった.それは,日本の社会学分野での初の本格的な執筆ガイドであり,細かいところまで神経の行き届いたその優れた内容から,その後,社会学論文を執筆する人々のもっとも重要な指針となってきた.しかし,社会学研究を取り巻く環境は常に変化しており,論文執筆にかんしても考慮すべき新たな状況が常に生まれ続けている.旧版『スタイルガイド』刊行以降,そこで触れられていない事態や,そのまま適用しにくい事態が生じた時などは,その時々の編集委員会で慎重に検討をし,『日本社会学会ニュース』やHPで告知しながら,柔軟に対応をしてきた.

 今期の社会学評論編集委員会が立ち上がった時点で,旧版『スタイルガイド』刊行から7年が経過しており,編集委員会事務局には,『スタイルガイド』にかんしての修正点,検討課題等がすでにかなり蓄積されていた.日常的業務の多い編集委員会に,『スタイルガイド』改訂という大きな非日常的業務を持ち込むことは躊躇されたのだが,いずれどこかでなされなければならないことであるし,今期委員会の終了時点で,旧版『スタイルガイド』刊行から10年という区切りのよい時期になるので,このさい,思い切って改訂版を刊行しようと考えた次第である.

 改訂のポイントは大きくみて3つある.第1は,インターネット環境の普及に伴い,一般化した電子情報の扱い方などにかんして,適切な指針を打ち出す必要があったということである.これは,今回の改訂の目玉とも言うべき部分であって,「3.8 ウェブ文書からの引用」という節を新たに加え,「4.5 電子化された資料」は大幅に書き足した.旧版の『スタイルガイド』をお持ちの方は,この部分がもっとも異なる箇所なので,ご注意いただきたい.

 第2の改訂のポイントは,旧版が刊行されたときにはなかった「日本社会学会倫理綱領にもとづく研究指針」が2006年10月に制定されたので,その内容を『スタイルガイド』にも反映することであった.旧版には,社会学評論独自の指針として,「バイアス・フリー」や「調査倫理」について述べられていたが,ずれが生じてはいけないので,この改訂版では,それらをけずり,「6.2 論文執筆のさいに守るべき倫理」に,「日本社会学会倫理綱領にもとづく研究指針」の「4.論文執筆など研究結果の公表にあたって」を全文掲載することとした.

 第3の改訂のポイントは,これまで10年の間に柔軟に対応してきた,投稿にあたっての新たな形式上の注意事項をまとめて明示することであった.それらは形式上のことであり,一見すると些末なことのように思われるかもしれないが,けっしてそうではなく,きちんとしたがっていただかないと,査読や印刷において支障をきたすことばかりである.この修正は,主として「5. 形式上の注意事項」で述べている.

 この3点以外にも,「4.2 欧文の文献」に「(6)英訳文献,その他の外国語翻訳文献」の記載の仕方を新たに明示したり,「3.6 フィールドワーク資料からの引用」の仕方をより詳細にしたりしている.その他細かいところもあげるならば,修正点は多岐にわたっているので,今後論文を執筆するさいには,ぜひこの改訂版にしたがっていただきたい.

 改訂版を作るという作業は思った以上に面倒な作業であったが,なさねばならないことであれば,苦労を厭わず自らの時間をけずってでも仕事をする編集委員ばかりであったので,この作業がなしえたと思っている.改訂版検討ワーキンググループのチーフであった浜日出夫委員のイニシアチブのもとに,よいチームワークができあがっていたためになしえた仕事でもあった.旧版刊行から10年経った今,こうして無事に,『第2版スタイルガイド』を刊行できることをおおいなる喜びとしたい.

 今期委員会としてはできる限りのエネルギーを注いで改訂版を完成させたわけだが,こちらで気づかなかった問題点などもあるのではないかと思う.必要に応じて随時変化し続けることが,『スタイルガイド』に永遠に課された課題であろう.お気づきの点があれば,ぜひ編集委員会までご連絡いただきたい.この『第2版スタイルガイド』が,すべての社会学研究者にとって役に立つものになってくれれば,と願っている.

2009年8月25日

日本社会学会編集委員会委員長
片桐新自

編集委員                                     
藤村正之  庄司洋子 川崎賢一 木本喜美子 後藤範章 小林久高
斎藤友里子 樽本英樹 浜日出夫 桝潟俊子  宮本孝二 好井裕明