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会長就任にあたって

大塚 豊

日本比較教育学会 会長 大塚 豊

本学会では1973年の入会以来、35年間活動して参りましたが、歴代の優れた会長各位のお姿を思い浮かべるにつけ、 また、あまたの先輩諸氏、優秀な同輩や気鋭の若手会員がいらっしゃる中で、浅学の徒が会長職を務めることに、 他ならぬ私自身が内心忸怩たるものを感じざるを得ません。しかし、学識はさておき、 比較教育学という学問への敬意と情熱だけは強く持っています。この気持ちをもって、 学会の更なる発展に微力を尽くす覚悟ですので、ご支援のほど、宜しくお願い申し上げます。

さて、教育学を構成する各下位領域ないし専門領域ではそれぞれ外国研究、比較研究が行われてきました。 そのため、比較教育学という学問の固有領域あるいはレゾンデートルが問われて久しいと思います。しかしながら、 その教育に関する研究が手つかずの国や地域が未だかなりの数にのぼります。

また、わが分野以外での成果も含めて、すでに相当の先行研究が蓄積されている国や地域についても、 国情、経済や政治、文化などへの周到な目配りをもって、その真髄に迫る研究は甚だ限られているのではないでしょうか。

他方、対象となる問題群についても、開発支援、環境、国際交流、ジェンダーをはじめとして、対象の包括性、広汎性のゆえに、 他の限定的な専門領域ではカバーしきれず、わが分野にうってつけの問題群が広がっています。 さらに比較研究法そのものの検討も、いつの頃からか停頓したままです。 こう考えますと、教育理論の構築と教育の実践的課題解決に貢献するために、 比較教育学研究者にこそ期待されているといっても過言でないテーマに溢れているようにも思われます。

そこで、われわれが今なすべき事の一つは、比較教育学というこの学問分野の守備範囲を措定し直し、 わが分野のウィングがどこまで広がっているかを再定義するとともに、 これまで蓄積してきた知見を社会に改めて還元する仕事のように思われます。 勿論これは年次大会での発表や学会紀要などを通じて、継続的に行うべきであることは言を俟ちませんが、 すでに望田前会長の時期に提起され、今ようやく芽が出かかっている比較教育学の総合的な事典の編纂を 通じて行うことも重要な方途であろうと考え、改めてその推進を提起する次第です。この事業が軌道に乗るとすれば、 若手の会員諸氏にはおおいに実際の執筆に参加協力をお願いし、また経験豊富なシニア会員には自らご執筆いただくことはもとより、 若手会員を善導する役割をも担っていただけると思います。こうした作業を通じて、学会としてのいっそうの凝集力を高めうるでしょう。

その他、外へ向けての発信作用の強化を図るための学会ホームページの充実や、諸外国の関係学会、 とくに交通至便な近隣諸国とのさらに緊密な研究交流の展開などを進めていくべきでしょう。 但し、学問研究の発展は会長や役員がどんなに頑張っても一朝一夕には望めません。 やはり会員一人一人の日々の研鑽と精進によってのみ可能でしょう。 私および新役員はこれから会務の円滑な運営のために可能な限りの努力を払うことをお約束いたしますが、 同時に、会員の皆様におかれましては、本学会をさらに盛り立てるために、ご尽力を惜しまれることのないよう、切に希望するものです。

(2008年7月27日)

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