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会長就任にあたって

杉本 均

日本比較教育学会 会長 杉本 均

このたび第15代日本比較教育学会会長を拝命いしたしました杉本均です。よろしくお願いいたします。これから3年間京都大学に学会の事務局を置かせていただきます。事務局長は南部広孝幹事にお願いしています。京都大学に事務局が置かれますのは、第5代の小林哲也会長の時以来、京都の大学に事務局が来ますのは、第11代石附実会長の時以来となります。

私が日本比較教育学会に入会しましたのは、1985年で、同年修士論文を上越教育大学の大会で発表いたしました。それから私も今年でちょうど会員歴30年ということで、学会の創設から50周年の年に会長をさせていただくことは少なからぬ縁を感じるところです。しかし会員歴30年というのは、近年の歴代会長のなかでは短いほうです。日本比較教育学会には私の知らない歴史がまだ先に20年もあるということになります。今年前会長、大塚豊先生のもとで編集されました『学会50年の歩み』はそんな私の知識の欠損を補ってくれる玉手箱のようなCDです。しかし歴代の会長リストの錚々たる顔ぶれは大きなプレッシャーであります。経歴においても、年齢においても、私の会長選出は全く予想外のことで、ただ驚いていますが、少なからぬ方々からご支持やご期待をいただいたということも事実でありますので、その期待を裏切らぬよう、みなさまのご協力のもと、微力とはいえ、できる限りの力を尽くしたいと考えています。

さて、すでに触れましたように、今年日本比較教育学会は創立50周年を迎えました。それを記念する第50回大会はこの7月に名古屋大学で開催され、さまざまな企画が盛大に執り行われましたが、詳細は大会報告に譲りたいと思います。ここに至る学会の発展を語るにおいて、忘れてはならないのは、大塚豊前会長のご功績であります。大塚会長は2008年から2期、6年間にわたり会長を務められ、その任期は初代平塚益徳会長の16年間に次ぐ長期となりました。大塚会長の時代に日本比較教育学会は会員数1000人を超え、日本を代表する学会の一つとして、おおいに発展いたしました。大きくなることが学会の第一の目的ではありませんが、規模というものも大事で、その間に学会業務の一部の外部委託が実現したのも、この規模に負うところが大きいと思われます。

また大塚会長の業績で特筆すべきは『比較教育学事典』の編纂であります。これは1972年の『世界教育事典』以来40年ぶりに刊行された事典で、本学会員を中心に総勢333人の執筆者により1036項目を網羅し、比較教育学が蓄積してきた知識の集大成とも言えるものです。またこの間、外国の近隣学会との交流にもご尽力され、中国、豪州・ニュージーランド、台湾、韓国、香港の近隣5学会との間で、紀要の相互交換をはじめとした交流が実現しています。そのほか、学会紀要の電子化、教育関連学会連絡協議会への加盟、いくつかの学会規定の改訂などにご尽力され、会長職の締めくくりに、学会のロゴを制定していただきました。大塚先生の学会へのご貢献はこれにとどまるものではありませんが、6年の間に日本比較教育学会をここまで発展させていただいたリーダーシップに敬意を表するとともに、この場を借りて感謝の言葉をおくりたいと思います。

私の今後3年間の学会へのビジョンはそれに比して凡庸ではありますが、大塚前会長の発展戦略を基本的に引き継ぐものであります。まず当然のことながら学会の発展に尽力したいと考えます。日本比較教育学会はすでに十分に大きな勢力となりましたが、そのプレゼンスが国内外の科学界において、さらに認知・評価されるように、努力すべきであると考えます。このためには、ただ学会員数を増やすというのではなく、長期間安定的に学会とかかわりあっていただける会員の数を増やすことが大事であると思います。そのためには大会発表や紀要論文の投稿などの規定、入会や会費徴収のシステムをさらに改善してゆく必要があると考えます。

第二に日本比較教育学会をアットホームな学会にしたいと希望しております。これは規模の拡大とは矛盾するような目標ではありますが、比較教育学会はなごやかで楽しいとおっしゃっていただく会員の方が大勢おられます。50年前の学会創設時の雰囲気を再現することはかないませんが、より親密なメンバーシップを築いて、大会のたびに仲間との再会を楽しむことができるような学会を目指したいと思います。そのためには学会員のみなさま同士のコミュニケーションを密にし、大会のラウンドテーブル・会員企画の拡大、ニューズレター、紀要、ホームページの充実などにつとめていきたいと思います。またそのことと関連して、毎年大会を引き受けていただく大会開催校の負担や、ボランティアに近い事務局スタッフの方々の負担をさらに軽減する何らかの措置が必要であると考えています。

第三に日本比較教育学会の研究成果のコンパイルを試みたいと思います。すでに大塚前会長のご尽力により、『比較教育学事典』、『学会50年の歩み』が編纂されておりますが、さらに学会の足跡を記録する作業を継続したいと思います。我が学会紀要は若手の研究者や院生の投稿・採択が比較的多いことで知られています。これは学会の発展・活性化にとっても望ましいことでありますが、一方で学会を指導し、第一線で活躍されている理事などのご研究に触れにくいという側面も感じています。全くの私案ではあり、難しい課題ではありますが、日本比較教育学会の会員の第一線の研究論文を集めた選書のような編集の企画を提案したいと思います。

以上ささやかな抱負を述べさせていただきましたが、会長の権限、能力はきわめて限られています。日本比較教育学会の発展は、会員のみなさまの積極的な参加とご協力なくしてはかないません。どうか今後ともみなさまの熱いご支持とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2014年

過去の会長あいさつ

会長就任にあたって (2008年7月27日)
御挨拶 (2009年7月2日)
会長再任に当たって (2011年8月1日)
会長挨拶 (2012年8月1日)

歴代会長

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